二度目以降のアクセスの場合、リロードを推奨します。参考:ホームページを更新したのに「内容が変わっていない!」を解消するスーパーリロードとは
このページに収録した内容の主要部分は、「会話の構造(そして中学生の語彙力):烈車戦隊トッキュウジャー第01話」を参照するほうがより良いだろう。(追記:2020.05.04)
テレビ朝日系放映番組「烈車戦隊トッキュウジャー」第01話に関連して、かつて書いた記事をこのページにまとめておく。なお、このページ以外にも、第01話に関連した内容は、「あらすじ・アブストラクト・要約」、「小学生向けの、記述式試験答案のお手本になることを目指した文章 ―『烈車戦隊トッキュウジャー』を題材にして―」「メモ:幼児番組に使用されていた漢字語」に記載されている。(2020.03.05)
筆者は、フィクションを用いて「せりふ」の箇所を「〇〇と言った」というふうに、せりふを直接引用するような話法ででなく、主に発語内行為によって言語行為を記述させる、というような「描写作文課題」を生徒にやらせることには賛成ではない。ただ、そういう課題をやらせたいのでなんとかしてほしいといった要請がどこかに有るような気がしたので、仕方なく書いてみたタイプの内容である。とは言え、この内容も何かの役には立つのかもしれないと思い、よくわからないままこのページにまとめておくことにした。今後、再構成や修正をするかもしれないが、そのあたりの方針はまだ決めていない。
怪人バッグシャドウは「えええ泣き声だ いい闇を感じるぞう 子供たち もっと泣けえ はっはあ」と言った。
怪人バッグシャドウは自分の求める「良い闇」をたくさん手に入れるために、誘拐した子供たちにもっと泣けと嬉しそうに叫び、子供たちを怖がらせた。
バッグシャドウは「おっ 妙な鳴き声 んー 違う この状況で寝てるのかあ 誰だあ」と言った。
豚の鳴くような泣き声以外の音がバッグシャドウに聞こえ、またそれが寝息のように思えた。それによって、自分を恐れないで安眠している子供がいるとバッグシャドウは思ったので、怒ってその主を捜しに向かった。
バッグシャドウは「ほわっ 何で大人が乗っている おい 貴様 起きろ」と言った。
子供だけを誘拐したはずなのに、電車に青年が乗っているばかりかあまつさえいびきをかきながら眠りこけてすらいたので、バッグシャドウはまず驚いた。だがすぐに気を取り直し、怒りながら青年の胸倉を掴み、覚醒させようとした。
らいとは「いただあきまああああす」と言った。
その青年らいとは寝ぼけたままの状態で、怪人のことを食べ物だと思い込み、怪人の体に食いついた。
バッグシャドウは「あ あ あ痛て 俺は 食い物じゃないっ」と言った。
バッグシャドウは自分に寝ぼけて食いついてきたらいとに対して、自分は食べ物では無いとらいとに訴えた。さらに怒りに任せてらいとの身体を振り払い、そして座席に叩きつけて、らいとを覚醒させようとした。
らいとは「あれっ」と言った。
らいとは汽笛などの音に気づいて、突然起き上がり辺りを見回した。
バッグシャドウは「おおお あの列車 レインボーラインか」と言った。
バックシャドウもその音に気づき、車窓から覗き見た。それが敵であるレインボーラインであることに気づき、バックシャドウは驚きの声を上げた。
らいとは「なにっ」と言った。
らいとは好奇心に駆られて、バックシャドウの頭を押しのけつつ、車窓からレインボーラインを見ようとした。
バッグシャドウは「レインボーラインめ 弾き飛ばしてくれるっ」と言った。
自分の操縦する列車によってレインボーラインを弾き飛ばしてやるという敵愾心をむき出しにした宣告を、バッグシャドウは誰にともなくわめきちらした。
バッグシャドウは「撃てえ」と言った。
バッグシャドウは、列車を空中に舞い上がらせて、レインボーラインに向かって砲撃するような音声操作をした。
バッグシャドウは「はっはっは 何っ」と言った。
レインボーラインもまた汽笛とともに空中に舞い上がったため、まさかそこまで敵が出来るとは思っていなかったバッグシャドウは驚きの声を上げた。
バッグシャドウは「おのれえっ 乗ってるのは誰だいっ」と言った。
レインボーラインが砲撃の仕返しをしてきたばかりか、列車ごと体当たりまでしてきたので、バッグシャドウは列車を慌てて地上に着陸させて、まだ姿の見えぬ正体不明の「敵」に対して、彼は怒りの感情をあらわにして叫んだ。
らいとは「俺も見たい」と言った。
レインボーラインに対する好奇心を抑えきれないらいとは、自分の思いを口走りながらバッグシャドウの上にのしかかるような体勢になった。そのままレインボーラインの方に向かおうとして、二人とも地上に転落した。
バッグシャドウは「貴様は引っ込んでろお」と言った。
らいとのせいで地面に叩きつけられたバッグシャドウは、らいとに対する怒りの感情を口にしながら、らいとを殴り倒した。
特急三号は「足下気をつけてって言ったでしょ」と言った。
レインボーラインから降りるとき特急二号が思い切り転んだ。事前に足下に気をつけるように特急三号が言っておいたにもかかわらずだったので、三号は二号に少し呆れてみせた。
三号は「はいっ」と言った。
列車から降りるのが難しいと思ったので、五号が降りるとき既に降りていた三号は手を貸して、降りるタイミングが合うように五号に掛け声をかけた。
らいとは「わあっ」と言った。
らいとは木から滑り落ちる夢を見ていたところで覚醒して、恐怖のあまり叫んだ。
ひかりは「おっ 気がついた」と言った。
らいとの叫び声を聞いて、意識が戻ったことがわかったひかりはそれに反応してつぶやいた
みおは「大丈夫?」と言った。
らいとの体調を気遣うようにして顔を覗き込みながら、みおはらいとに大丈夫かと声を掛けた。
らいとは「電車の中か」と言った。
汽笛の音を聞いてらいとは自分の今いる場所が電車の車内であることに気づき、その確認をしようと誰にともなくつぶやいた。
とかっちは「うん。今逃げた怪人追ってるとこ」と言った。
らいとの確認を肯定したのはとかっちであった。とかっちはらいとに今は先ほど逃げた怪人を追っている最中であると状況説明をした。
らいとは「って事は もしかしておまえたちがさっきのトッキュウジャーってやつか」と言った。
とかっちの説明で、昏睡前の状況と現在とが結びついたらいとは、先ほどまでの痛快な戦闘ぶりを思い出して興奮し、目の前の四人がそのときのトッキュウジャーという戦隊と同一人物であるかどうかを熱心に確認しようとした。
みおは「まあね」と言った。
嬉しそうに確認するらいとに対して、かぐら・とかっち・ひかりの三人は、どことなく含みのありそうな笑顔で無言でうなずいた。皆が無言だったのでみおは、らいとに対してまあねと言葉に出して返答をした。らいとの気づきが間違ってはいないけど、まだ何か足りないということを四人のその態度は示唆するかのようでもあった。
らいとは「わあっ」と言った。
らいとは木から滑り落ちる夢を見ていたところで覚醒して、恐怖のあまり叫んだ。
ひかりは「おっ 気がついた」と言った。
らいとの叫び声を聞いて、意識が戻ったことがわかったひかりはそれに反応してつぶやいた
みおは「大丈夫?」と言った。
らいとの体調を気遣うようにして顔を覗き込みながら、みおはらいとに大丈夫かと声を掛けた。
らいとは「電車の中か」と言った。
汽笛の音を聞いてらいとは自分の今いる場所が電車の車内であることに気づき、その確認をしようと誰にともなくつぶやいた。
とかっちは「うん。今逃げた怪人追ってるとこ」と言った。
らいとの確認を肯定したのはとかっちであった。とかっちはらいとに今は先ほど逃げた怪人を追っている最中であると状況説明をした。
らいとは「って事は もしかしておまえたちがさっきのトッキュウジャーってやつか」と言った。
とかっちの説明で、昏睡前の状況と現在とが結びついたらいとは、先ほどまでの痛快な戦闘ぶりを思い出して興奮し、目の前の四人がそのときのトッキュウジャーという戦隊と同一人物であるかどうかを熱心に確認しようとした。
みおは「まあね」と言った。
嬉しそうに確認するらいとに対して、かぐら・とかっち・ひかりの三人は、どことなく含みのありそうな笑顔で無言でうなずいた。皆が無言だったのでみおは、らいとに対してまあねと言葉に出して返答をした。らいとの気づきが間違ってはいないけど、まだ何か足りないということを四人のその態度は示唆するかのようでもあった。
ひかりの「きずいたんじゃない」の発話はらいとに差し向けられたものではない、ということに「生徒」が気付くことは決定的に重要である。ひかりのこの発話は、他の3人つまり、とかっち・みお・かぐらに差し向けられており、かつ聞こえるようになされている。ただし、「きずいたんじゃない」はらいとにも聞こえていることをひかりはわかっており、らいとが応答しても構わないようにはなっている。
のちの発話からわかるように、ひかり・とかっち・みお・かぐらの4人は「あともう1人メンバーがいる」ということを事前に車掌に聞いて知っており、それがらいとであること、そのらいとこそが目の前で倒れて昏睡している人物であるということを、直感的には確信し合っている。らいとによって遮られたとかっちの発話「そお じつわぼくたちずっ」のあとには、「ずっと待っていたんだ」という発話が後続しただろうことが予感できるようにできている。
ひかりの「きずいたんじゃない」は他の3人に向けたものだというのは、まずは他の3人であれば「何に気づいた」のかを省略した発話であっても通じるはずだからである。ただし、らいとが「4人がずっと記憶の回復を待っていた」ということも含めて気付いたのなら、このひかりの発話に応答しても良いようになっている。ひかりの発話は、らいとととかっちの会話に割って入るように、あるいはらいとの発話にかぶせるようにしてなされている。なぜことさらにそうしたのか、その意図までわかるのなら、らいとが応答しても良いんだぜ、というそういう一種の賭けの要素を含んだ発話であったとも見なしうる。
このひかりの発話と、その少し前の「おっ きがついた」とで「きずいた」と「きがついた」とが本質的には「同じ単語」であることに気付くことも、一定年齢以下の生徒の場合重要である。そしてややこしいが、この「気づいた」対象は異なるのだ。「気づいた」と「気が付いた」で意味は同じなのだが、その気づいた対象が違う。そのことを反映させてみよう。
「ひかりは“おっ きがついた”と言った」というふうに書きうる箇所は、たとえば「らいとの意識が戻ったことにひかりは反応してつぶやいた」とでも作文できるだろう。一方、「ひかりは“きずいたんじゃない”と他のみんなに言った」というふうに書きうる箇所は、たとえば「らいとの記憶が戻ったらしいことをひかりは皆に示唆した。そしてそのことをらいとの発話を遮って行なうことでらいとの注意を自分の発話に向けさせた」とでも作文できるだろう。最初の気づいたのは「意識が戻った」であり、二番目の気づいたのは「記憶が戻った」であった、というわけだ。
ちけっとくんの発話に関してメモしておく。この第01話の場合、「ちけっとくんは誰誰に○○と言った」というのは、おおむね「ちけっと君は誰誰に憎まれ口をたたいた」とでも作文できる。ただそうすると、マンガ作文の指導者が往々にして「言った」ばかりを使うのを嫌うのと同じで、ちけっと君の場合いつも「憎まれ口をたたいた」ばかりになって、単調だし日本語として美しくないし、頭を使っていない、というふうに指摘することになる。なので、憎まれ口のあいだにも、差をつけた書き方をしないといけなくなる。
らいとが車掌に「自分がトッキュウジャーのメンバーに入っている」ことを確認したら、車掌ではなくちけっとくんが応答したくだりである。この発話を「ちけっとくんは質問したらいとに憎まれ口をたたいた」とだけ作文するのは、いかにも何かが不足している。と言って、反対に「らいとは自分がメンバーに入っているかを確認した。入っているという返事がちけっとくんから得られて、らいとは喜んだ」というふうに書くのも、これはこれで、何かが不足している。
ここでの有意味な出来事はこうだ。まず質問した相手は車掌なのに答えたのはちけっとくんであること。次に、らいとはちけっとくんの発話内容に対しては反応しなかったということ。らいとの「返答」というのは、コストパフォーマンスが抜群に良いのが物語を通しての特徴である。即断即決の男なのだ。なので、そのことを重視したい。
「らいとは自分がメンバーに入っているかを、車掌に、何の疑いも無いかのようにして確認した。すると、入っているという返事が車掌からではなく、ちけっとくんのほうから、悪態をつきつつも得られた。態度の悪いちけっとくんから賛同が得られたのを聞いて、らいとは喜んでやる気を見せた」とでも書きうるかもしれない。ちけっとくんですら反対しなかった、他の誰が反対するだろうか、いや誰も反対しないだろう、というわけだ。
「悪人」どうしの会話はだいたいどの子供向け番組でもとても難しい。中学生レベルくらいかもしれない。ここではどの悪人も「皇帝のため」という目的では一致しているが「そのためにどうするか」という手段のレベルでは一致していない、ということをテレビ作文の「指導者」は「生徒」に伝えると良いだろう。物語が進むにつれてこれはたんなる意見の差ではなく忠臣と逆臣の違いであることが徐々にわかってくる。しかしこの第01話だけでわかる必要はむろん無い。
戦隊ものでは悪人どうしの会話は概して難解な傾向にある。また、トッキュウジャーの場合は加えて、車掌の解説調の発言もわりと難しい。要するにこれらは語彙が幼児には難しいというのがまずあり、それに加えて悪人どうしの場合、間接的発話行為と呼ばれうるタイプのものが多いからという事情もある。また物語に固有の造語やジャーゴンも多い。なので、一般的な単語なのかそれともこの物語でだけ通用する造語・ジャーゴンなのか、幼児にその識別が難しい。さらに、「一般的な単語」が「この物語に特有の設定に即して」使われているという場合すら決して少なくない。ただし、音声を聞く場合だと、音声から話者の感情が聞き取れる場合が少なくないので、「人の感情」に特に鈍感でない子供なら、言葉はあまり理解できなくとも、話の流れはある程度感じ取ることが可能ではある。
「バックシャドー。新しいステーションの完成はまだですの」とノア夫人はバックシャドーに言った。
新しいステーションの完成が遅いとノア夫人はバックシャドーを責め、その時期がいつになるかと詰問した。
「はっ。既に『ガキ捨て山駅』と名づけ、後は子供たちを運ぶだけ。子供らの泣き声が良い闇となることでしょう」とバックシャドーはノア夫人に言った。
バックシャドーはノア夫人に対してかしこまった。そして、ステーションの名称についてのプランと必要な段取りは残り僅かであることをノア夫人に答弁し、またそのプランのメリットを強調した。
「お母さまぁ、グリッタは退屈ですぅ、お外に出たいー」とグリッタはノア夫人に言った。
自分が退屈なので早く屋外に出たい、とグリッタは母であるノア夫人に甘えた態度と足をバタつかせる落ち着かないとでも言うような挙動とで、せがんだ。
「おお、グリッタ。もう少しですから我慢なさい。お母様が良い闇に溢れたステーションをつくってあげますからね」とノア夫人はグリッタに言った。
ノア夫人はグリッタの甘えた態度を甘受し、今しばらく待てば良い闇に溢れたステーションができると言い聞かせた。
「ノア夫人。まだ遊びのステーションをつくるのは早いですぞ。今必要なのはシャドーラインの路線を拡げる事。闇の皇帝をお迎えするために」とネロ男爵はノア夫人に言った。
ネロ男爵はノア夫人が優先順位の低いプランに入れ込んでいることについて、命令するような口調で諫めた。そして闇の皇帝のためになる優先順位の高いプランは路線の拡張である、とノア夫人に対して厳かに主張した。
「ネロ男爵。グリッタはいずれは皇帝のお妃となる子ですのよ。美しさを保つのも皇帝のためです」とノア夫人はネロ男爵に言った。
ノア夫人はネロ男爵に対して一歩も引くことなく負けじと厳かな口調で名前を呼び返した。そして、グリッタの美しさを保つことが皇帝のためになること、したがってステーションをつくるプランの優先順位が決して低くないことを、ノア夫人はネロ男爵に対して力強く主張し返した。
後続する「シュバルツ様」「トッキュウジャーか」はそれぞれグリッタとシュバルツの独白であり、会話行為ではないことが見ればわかるので、特筆すべきは無い。