小学生向けの、記述式試験答案のお手本になることを目指した文章 ―『烈車戦隊トッキュウジャー』を題材にして―

このページの文章は適宜追加修正する可能性がある。またこの文章と関係が深い他のページにやはり、日本語は述部が最後に位置するので、最後まで文を辿らないと大意がわからない:寺村秀夫の書いた文章での検討がある。

小学生向けに書かれている書籍の文章の多くは、記述式試験の答案で用いることが許容されていない文体で書かれている。その文体をそのまま学習して記述式試験で使用するならば、おそらく大幅な減点をされて、不合格になりかねない。だから記述式試験を受験する小学生がそうならないためには、「試験の答案で用いることのできる文体」で書かれた文章を一度は読み、「文体のお手本」として習得や理解をする必要があるはずだ。…と、そのような考えに則って以下の文章は書かれた。したがってこの文章もまた小学生向きに書かれている。

記述式試験で許容されていない文体とは、たとえば「敬体文」「会話に頻出するような文体」「語りかけるような文体」「教え命令するような文体」「必要以外の体言止め」「助詞や述語の省略が多すぎる文体」などが挙げられる。

試験の題材を『烈車戦隊トッキュウジャー』に求める。すなわち、この番組のDVDを視聴したうえで回答・解答するという試験を想定することとする。なお、この番組は2014年2月~2015年2月にテレビ朝日系列放送局で放映されたものである。

ところで筆者は文学理論にも物語理論にも美学にもメディア論にも、特別の知識や見識をもっていない。初心者レベルかそれ以下である。そのため、以下の文章が「人文系の学問の成果を充分に反映していない」ものになる可能性はきわめて高い。しかし、文学理論や物語理論に通暁した者は現職の国語教員にむしろなりやすい場合もあるのだから、国語教育の各場面でそれらの面に関しては相当に生徒に伝達されているはずだろう。だから、その面での不足や誤りは大した問題ではないはずだ、とは言いたい。

トッキュウジャー第06話「探しものはなんですか」

第06話ではどのような「問題の解決」が描かれていましたか。君の考えを述べなさい。

答の例

第06話では、行方不明になったサポート列車を発見して無事に回収するという任務が戦隊に与えられた。ところが悪の組織の幹部もまたこの列車を欲しがっており、戦隊がサポート列車を発見したところで収奪しようと企図していた。まず前半で、この幹部の人質作戦から身を守りつつ、サポート列車を先んじて発見し回収するという「解決」が描かれた。そして後半では、運転しているサポート列車に対して悪の幹部が列車での攻撃を加えてきた。それに対して防御し撃退するために、戦隊側ではサポート列車の未知の性能を発見する必要があった。続く後半では、その発見に成功し悪の幹部を無事撃退するという「解決」が描かれた。

第06話ではどのような「成長」が描かれていましたか。君の考えを述べなさい。

答の例

集団のリーダーという点に関して、主にライトとトカッチの「成長」が描かれていた。

トカッチは、集団にはリーダーが必要であり、そのリーダーというのは他のメンバーよりも余裕をもち、他のメンバーの不足を補い助けるほどの能力がなくてはならない、と信じていた。そしてリーダーという地位に対しては、過剰に憧れているがゆえに、自分には却って不釣り合いであると思っていた。そのため、「リーダーは別にトカッチでいいんじゃない」というふうに他のメンバーに消極的に信任されたことで、思ってもみない展開に俄然奮起した。しかし、敵との戦いを通じて、自分の抱いていたリーダー観にふさわしい振舞いができていなかったと感じた。つまり、自分にはできることしかできない、他のメンバーが主ならその従になるようなサポートが自分にふさわしい、と適性を再認識することとなった。ところがその点をライトに「サポートが得意なリーダーもいて良い」と言われ、さらにライトによって全員に「○○リーダー」とあだ名をつけられることによって、固定したリーダー像や集団観を見直すきっかけが与えられた。このように、自分の適性を再認識し、なおかつ「それで良い」という是認が与えられて固定的な考えから解放されるようになったことがトカッチの「成長」として描かれていた。

ライトは、そのトカッチが「リーダーらしく振る舞わなければならない」という「固定観念」に囚われることで、却って捨て身の行動に出ることができ、もともともっていた、自分自身の身の丈に合った行動だけをとるという消極的な姿勢を打ち破るきっかけとなった展開を目の当たりにした。それまではライト自身は戦隊という集団にリーダーなど不要だと考えていたが、その考えを少し見直すこととなった。すなわち、リーダーという考え方がもたれることで成員の行動が良い方向に変化することがありうることを実感したのであった。そのため、状況に応じて各メンバーがそれぞれ得意分野を発揮すれば良いという考え方から、少し変化させた考え方をもつようになった。それが、各自の得意な面を生かして全員がリーダーとして振る舞う、という集団観であった。このように「リーダーという考え方」自体がメンバーに与える影響を深く理解したということがライトの「成長」として認識可能なように描かれていた。

トッキュウジャー第05話「消えた線路のむこうがわ」

第05話ではどのような「問題の解決」が描かれていましたか。君の考えを述べなさい。

答の例

第05話では、悪の組織の戦闘員によって町の人々の食料が強奪され、人々は飢えで苦しんでいた。飢えのために人々は無気力になり、さらに他人には食料を分け与えないような排他的な行動に出た人までもがいた。これが描かれていた「問題」である。悪の組織の戦闘員が戦隊に打倒されたことによって、食料が強奪されてしまう問題は解決し、人々は、普通に食料が手に入るような生活に再び戻った。そのような「解決」が描かれている。

第05話ではどのような「成長」が描かれていましたか。君の考えを述べなさい。

答の例

この第05話では主に二種類の「成長」が描かれていた。一つは町の人々が戦隊と出会ったことによって起こった「成長」であり、もう一つは戦隊メンバーの「成長」である。

町の人々が戦隊メンバーに出会ったことによって起こった成長にもさらに細かく言えば、二つの種類のものが指摘可能である。一つは、自分たちが被害を蒙ったことによってさらなる他人にも被害を及ぼすと、大変に疚しい気持ちになるということを悟った、というものである。こういうことだ。物語に登場するキャンプのメンバーは、悪の組織に食料をほとんど奪われており、隠し持っていた最後の食料を与えないために、気絶して行き倒れていた戦隊メンバーのライトを見捨てて遺棄しようとしていた。そしてライトが居たことによって最後の食料が台無しになりそれに腹を立てたキャンプメンバーたちは、ライトを自分たちのテリトリーから追放した。しかしそのことでメンバーたちは平和になるどころか、かえって疚しい気持ちや罪悪感にかられるようになった。このように、たとえ被害者の立場であっても、自分たちがさらなる被害者を生み出すような行動をとると、かえって精神的には苦痛になることがある、あるいは反対に被害者どうしで助け合うと、精神的に少し楽になることがある、そのことを悟ったというキャンプメンバーの成長が描かれていた。

今一つ物語が示唆していた成長が、指摘可能である。それは「必要なものがあらかじめ用意されていない場合は、自分たちで用意すれば良い」という「世界の法則」を登場人物が悟ったこと、というものだ。これは二つの並行的な事態に見てとることが可能な悟りである。

一つは「食料」についてである。この物語は、加害者である悪の組織も被害者である町の人々も「食べ物というのは、食品や食料の形であらかじめ誰かによって準備されたものである」という枠組の中で行動している。その点では加害者と被害者とは同一の行動原理で動いている。ところがそこに共同体の外側から戦隊のライトが登場し、こともなげに食用となるヤマメや筍を発見する。これは加害者にも被害者にも見落とされていた「食材」である。そのことを目の当たりにしたキャンプのメンバーにとっては、「あらかじめ食品や食料として準備されていない食材」というものがありうること、あるいは発見しうること、を知った契機となった。これはキャンプメンバーに起こった成長である。

他方、戦隊メンバーはこれと並行的な、ある成長を遂げている。それは巨大化してカーキャリアレッシャーをも含めて合体した事後の、そのカーキャリアの「使い道」についてである。ライトは「自分たちでスゴくするんだよ」と豪語し、その発言通り、カーキャリアの性能を活用した攻撃方法をその場で編み出して見せた。そもそもカーキャリアレッシャーは合体できることすら当初知られておらず、合体可能であることもそれを用いて攻撃できることも、すべてライトが即興で考案したものである。この一連の行動から「あらかじめ武器として準備されてはいない」装備であっても創意工夫次第で武器として活用することができる、そのことをライトは他の戦隊メンバーに悟らせた。この悟りが物語が示唆する今一つの成長であり、それは食料に関してのキャンプメンバーの悟りと並行的であると言いうるのである。