会話の構造(そして中学生の語彙力):烈車戦隊トッキュウジャー第06話

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はじめに

テレビ朝日系放映番組「烈車戦隊トッキュウジャー」第06話での会話の構造を、少し明確にしてみたい。そして、その会話の構造をどのように「記述」「描写」してみるのが良いのかを検討したい。ここで「記述」や「描写」に用いられる語彙というものを、中学生以上なら使うことができて良い語彙として提示する試みである。趣旨の説明は「会話の構造(そして中学生の語彙力):烈車戦隊トッキュウジャー第01話」の最初の節を参照してほしい。

烈車戦隊トッキュウジャー第06話 会話の構造の説明例

第05話の最後の場面の再現から、第06話は開始される。怪人を斃したのちに、帰還したレインボーライン内での会話である。第05話の内容を知っていればこの箇所は同じ内容なのでとばして良い。一方、第05話の内容を知らないという場合、ここも参照しないと以降の展開がわからない。

  1. 車掌が「さて、皆さん。サポート列車のおかげでまたひとつシャドーラインから駅を取り戻し線路もつながったわけですが、実は手許にあるのは、カーキャリアーで最後です。」と言った。
  2. トッキュウジャーの五人がいっせいに「えっ」などと言った。
  3. カグラが「もう無いの?」と車掌たちに言った。
  4. 車掌が「はい。あとはみんなシャドーの侵出が激しくなったとき、レインボーラインから外れて行方不明になってるんです。」と言った。
  5. ライトが「え?」と言い、他の者も同調して「え?」と言ったりした。
  6. チケットが「それを探すのもお前たちの任務の一つというわけですが、町・森・山・海、今どこにあるのかは全く。」と言い、ガクンと下を向いてしまった。
  7. すかさずライトが立ち上がって「あ!じゃあ、あれ、そうかな?」と言った。
  8. 車掌とチケットが「え?」と言った。
  9. ライトが「山の中で食べ物探してるときに変なの見たんだよ。この列車くらいありそうな水色のー」と言っているところで、すかさず車掌とチケットが「それですよ!」と言った。
  10. 五人はまたもやいっせいに「えー!」と声を上げた。
  11. ミオが「ライトー?」とライトに言った。
  12. ライトが「だっ」などと何か言った。
  13. ヒカリが「ライト早く言えよ。」とライトに言った。他のメンバーもくちぐちに何か言いながらライトに詰め寄った。
  14. ライトが「わかんなかったんだ。」「知らなかったんだ。」と責め立てる皆に言った。

車掌が「さて、皆さん。サポート列車のおかげでまたひとつシャドーラインから駅を取り戻し線路もつながったわけですが、実は手許にあるのは、カーキャリアーで最後です。」と皆に言った。この言い方は少し奇妙だと筆者は感じる。通常だと、話の流れというのは「既知→未知」という方向性のほうが理解しやすいからである。だから、この車掌の発話も次のようにして「さて、皆さん、またひとつシャドーラインから駅を取り戻し線路もつながりました。これはカーキャリアーつまりサポート列車のおかげでもあったわけですが、しかし、実は手許にあるサポート列車は、カーキャリアーで最後です。」という順番や言い方のほうが理解しやすい。少なくとも筆者にはそう思える。その主な理由はサポート列車というものがまだ、この第05話と前回の第04話にしか登場しておらず、また、その二つをまとめてサポート列車と呼ぶという「上位語」としての登場頻度も低かったからだ。ただし、ともあれこういったサポート列車といったものがまだまだたくさん有る、ということは、この第05話で初めて、一度アナウンスされてはいる。だが、そんなことに注意を払っている者など、登場人物にも視聴者にも、決して多くないはずだろう。そのように思うのだ。だが、また例によってというべきか、放映時間の都合その他の点で、いちばんきりつめた言い方を車掌は行ない、かつそのことは物語の中ではまったく問題化されることなく、ふつうに流通していった。「実は」と述べているが、そのことを意外に思うことができるほど、サポート列車などという話題になど誰が注意を払っていただろうか、と思いたくなるところである。だが、とにかくここでは「実は」が使われ、それがとても意外な事柄であるかのようにして、話が進んでいった。メンバーは皆、サポート列車というものがまだまだたくさんの種類がある、というアナウンスをとても良く注意して記憶もしていたのである。

だから、トッキュウジャーの五人がいっせいに「えっ」などと言ったりもした。「疑念」や「不審」の表明である。ただそれだけだと、何についての疑念なのかは、あいまいなままではある。

カグラは「もう無いの?」と車掌たちに言った。この発話によって、「疑念」の方向性が明確になった。つまり「実はこれで最後です」という点に「疑念」が向けられていたのである。「もっとたくさんある」というアナウンスをメンバーがとてもよく注意・記憶していたからである。ともあれ、カグラの発話は、「疑念の明確化」とも言えるし、端的に「質問」という定式化でももちろん良い。

車掌が「はい。あとはみんなシャドーの侵出が激しくなったとき、レインボーラインから外れて行方不明になってるんです。」と「説明」をした。これがこの車掌の語り方の特徴なのである。まず先にその行方不明の件を説明すれば早いとも思えるのに、先に「実はもうありません」と「驚かせ」ておいて注意を引き付けてから、おもむろに「説明」をする、というスタイルなわけだ。このときの車掌の発話群もまさにそれであった。

ライトをはじめとして、皆がくちぐちに「え?」などと発話し、動揺というか心配或いは深刻そうなそぶりを見せていた。いわば「重大な報告と受け止めて驚く」ということを実演的に行なったわけである。

「それを探すのもお前たちの任務の一つというわけですが、町・森・山・海、今どこにあるのかは全く。」とチケットはそこまで言って、ガクンと下を向いた。落ち込んでいるようにも見えるそぶりである。ただし、文がここで切れてしまったのは、下を向いて落ち込んでしまったからとは限らない。このときすかさずライトの「あ!」という発話がなされるからだ。そのせいかもしれない。だから、ここでチケットの発話した文が、述語のない中途半端な文になってしまったのが、チケットの意志によるのかライトの発話が開始したことによるのかは、はっきりしない。ともかく、そこがはっきりしないようにしてこの発話がなされていた、という事実があるのみである。ただそれでも、ここで文が切れてしまっても、文意がちゃんと伝わるようにはなっている。「全く」のあとには「不明です」「わかりません」などといった語群が来るに決まっているのだ。ではなぜそう予測・推測できるのか、と考えたときに、その前の「わけですが」の「が」が逆接の「が」に聞こえるという点もポイントになるだろう。「任務の一つであるが、しかし任務として命じることができるほどに、探す場所を絞り込めていません」というふうにつながるように聞こえるからだ。ともあれ、このチケットの発話は、「状況説明」といった定式化で良いのではと思う。

そこでライトがなした「あ!」という発話は、「今気づいたということ」の主張である。「じゃあ、あれ、そうかな?」という発話はその「気づいた」内容の説明或いはその予告くらいのものになるだろう。「じゃあ」というこの言い方は注目される。この言い方は先行する発話内にその「気づき」につながる要素が存在していなければ、使えない。その「気づきにつながる要素」というのは、おそらくチケットの「町・森・山・海」という箇所だろう。この言い方が先行していたため、「山」に心当たりのあるライトが反応しやすくなったというわけだ。

車掌とチケットが「え?」と言った。これは「驚きの表明」であり、相手のさらなる発話を促すものでもある。

「山の中で食べ物探してるときに変なの見たんだよ。この列車くらいありそうな水色のー」というライトの発話は、その予告された説明に該当する。ただし、全部言い終わるあきらかに前に、「のー」という音の伸ばしの箇所で車掌とチケットとが同時に「それですよ!」と発話して途切れることになる。この「それですよ!」という発話はどのように定式化できるだろうか。「指摘する」という行為であることはあきらかだ。それ以外にどう捉えることができるかだ。「それ」という指示語は、「自分よりも相手のほうに近い」対象を指す。「それですよ!」というのは、自分たちではなくライトのほうが近くに在った、という事柄を含むのだ。なので「自分よりもあなたのほうが近くに居ながら、なんで気づかないんですか」とでもいった非難の気分を軽く伝える言い方になりうる。この場合の「それですよ!」も、「ことと次第によっては非難につながる」こともありうるという、そういった言い方だと定式化可能だろう。非難そのものではないにせよ、その可能性は潜在させた言い方なのだ。いずれにせよ、もう一度その場所にわざわざ引き返さねばならない、ということになるのだから、自然とそうなる。

この「わざわざ引き返す」必要に反応したということだと思うが、ともかくそこで、他のメンバーが口々にライトを「なぜすぐに言わなかった」といった論難をした。そんなものが重要で自分に関係するものだとわかるわけもないのだからずいぶんと無理筋の要求のようにも思うし、人命が掛かった話でもないのに、少し奇妙な展開ではある。だが、車掌とチケットの「それですよ!」にすでにその非難の萌芽は含まれてはいたのだ。そう見なしたい。万全の見方とは決して言えないだろうが、それでも、そういう観点をたたき台として出してはおこうと思う。

  1. 車掌は「ライト君が目撃したのは、間違いなく行方不明になっているサポート列車の一つでしょう。全く反応が無いところをみると、全機能がストップしていますね。乗り込んで起動するしかありません。」とライトに通信で言った。
  2. チケットは「とっととお願いします。」とライトに通信で言った。
  3. ライトは「わかってるって」とチケットに通信で言った。

ここは簡単だと思う。車掌は状況説明をライトにして、チケットは指令をライトに出したのだ。その指令に対してライトは返答・是認をしたというわけだ。

  1. ライトが「どっちだっけなあ」とひとりごとのように言った。
  2. ミオが「え、覚えてないの」とライトに言った。
  3. ライトが「あん時は、食べ物探すのに忙しかったからな。」と言い、皆の方を向いて「まあ、何となくは覚えてるから。よし。こっちだ」と言った。ライトは指差した方向に一人で進んで行った。
  4. しばらくの沈黙ののち、ミオが「不安」と小声で言った。
  5. しばらくのちに、トカッチがミオの肩をたたいて「付いていくしかないよ」と言って、ライトの進んだ方向に行った。ミオも「ん」と小声でうなずいた。
  6. ミオとカグラも、同じ方向に向かったが、ヒカリはその場に立ち止まっていた。カグラがヒカリの様子に気づいて「ヒカリ」と言った。
  7. ヒカリが何か持っているのを見て、カグラがヒカリに「何それ?」と言った。
  8. ヒカリは「けん玉の替えひも。」と言い、それを木の枝に結びつけた。
  9. カグラはそれをみて「あ、そうか、目印。」とヒカリに言った。
  10. ヒカリはカグラに「よし、行こう。」と言った。カグラは「うん。」とヒカリに言った。二人も、他の三人と同じ方向に進んだ。

ライトの発話「どっちだっけなあ」は聞こえるようになされた独り言のようなものなので、他の者が言及したりすることもできる。ここではミオが「え、覚えてないの」という質問形式の発話を行なった。形式は質問だが、返答次第では非難や咎めに展開する可能性をもたせてある。

ライトは、そのyesかnoで返答するような質問に対して、まずは即答せず、遅延させた。すなわち「あん時は、食べ物探すのに忙しかったからな。」という発話がまずなされた。通常、これは「覚えていないことの理由説明」のように聞こえる。つまり、次にnoという返事が来そうな予感をさせる。だが、実際には少し違っていた。「まあ、何となくは覚えてるから。」と後続した。確かに、この回答の場合の理由説明としても、さきほどの回答は使うことができる。「あの時忙しかったから、何となくというふうに覚えているのだ」というわけだ。この際「まあ」が使われた。日本語の「まあ」が「部分的に是認できる」から「部分的にしか是認できない」まで幅広く使うことができるのと同じようにして、この場合も聞くことができる。「まあ何となく覚えている」という場合、「何となくなら覚えている」から「何となくしか覚えていない」まで幅広く解しうるわけだ。

なので、ライトは「何となくなら覚えている」派のように振舞い、「よし。こっちだ。」と突き進み、残されたミオが「不安」と、「何となくしか覚えていない」派のように振舞った。

トカッチがミオの肩をたたいて「付いていくしかないよ」と言った。これは「行動の促し」であり、いわば「肩を押す」ような行動だとも言える。この行動が一定の合理性をもっているのは、ライト以外はまったく見たことのないものを探している、というライトとそれ以外のメンバーとの非対称があるからである。その点を納得したのかどうか、ミオも「ん」と小声でうなずき、カグラも同調した。

しかし実は「付いていくしかない」なんてことはないことがヒカリの行動でわかることになる。ヒカリはそこで、自身の持つ「けん玉の替えひも」をその場所の木の枝に目印として結びつけておくことを、考案した。盲目的にライトについていく以外にも「やり方」というものは有ったのだ。このヒカリの行動を「次善の策をとった」とでも表現して良いと思う。或いは、「失敗した場合の可能性を考慮し、被害が最小限になるようにした」とも言えるだろう。

カグラはヒカリが最初立ち止まって進んでこないことに気づき「ヒカリ」と言った。これは「気にかけた」という行為だと言えよう。次に、ヒカリが何かを持っているのをみてカグラは「何それ?」と言った。これは単純に質問でもあるが、ヒカリが同調してこない意図を知ろうとする準備質問でもある。ヒカリはごく普通に「けん玉の替えひも。」と質問に返答し、それをカグラの目前で木の枝に結びつけてみせた。これで「意図」は伝わる。じっさい、カグラは「あ、そうか、目印。」と述べ、自分の質問によって知ろうとした意図がわかったことを、ヒカリに伝えた。

目的を達成したヒカリは、最初のカグラの「ヒカリ」という「気にかけた」発話に対しての応接を行なった。「ヒカリ」というのが「来ないの?」といった内容であることは明らかだからだ。なので、「よし、行こう。」というのがその応接に該当する。そして、それを聞き届けたことの確認としてカグラが「うん。」と返答した。

  1. ライトは「ん、なんか見覚えあるぞ、ここ。」と言った。
  2. カグラは甲高い声で「あ、あれ!」とどこかを指差して言った。
  3. ライトは「有ったか?」とカグラに言った。
  4. カグラは「んーん。ヒカリが付けた目印。」と言った。
  5. ヒカリが「さっきの分かれ道に戻ったってことだね。」と言った。
  6. ライト・トカッチが「えー」と言った。
  7. ミオがライトの肩をたたきながら「もーしっかりしてよ、ライト。全然覚えてないじゃない。」とライトに言った。
  8. ライトが「んあー、おっかしいなあ。」と言ってどこかに進んだ。
  9. カグラが「ヒカリが目印つけてくれてて良かったね。」とミオに言った。
  10. ミオが「ほんと、さすがだよ。」と言い、「なんだか陰のリーダーって感じ」と少しヒカリをこづいた。
  11. ヒカリが「陰って、俺ヒカリだし。」と言った。
  12. トカッチが「リーダーか。そう言えばちゃんと決めてなかったけど、番号からいって一号のライトがリーダーだよね」と、途中からライトのほうに向かって大声で言った。
  13. ライトが振り向いて「え?いいよ、そうゆうの。」とトカッチに言った。
  14. トカッチが「ダメダメ、グループ活動にはリーダーが必要なんだから。」と主にライトに言った。
  15. ライトが何かを探しながら、トカッチのほうを向かずに「じゃあ、トカッチやれば。」と言った。
  16. トカッチが「へ?」と言ったあと狼狽して、否定の身振りで手を振りながら「ぼーくはダメだよ。二番なんだし。」と言って後ずさった。
  17. ヒカリが「番号は関係無いと思うよ。」と言った。
  18. カグラが「うん、トカッチでいいと思う。」と言った。
  19. ミオがカグラに「だよね。」と言った。
  20. トカッチがひとりごとのようにして「ぼくが、トッキュウジャーのリーダー」とつぶやいた。
  21. それを見ていたミオはヒカリのほうを向いて「まあ無理に決めることないけどね。」と言った。ヒカリはうなずいた。
  22. 続けてミオは、カグラのほうに歩み寄っていき、「あ、カグラ、お茶飲む?」と言った。
  23. カグラはミオに「うん、ありがとう。」と言った。

前半と後半とで全然話題が変わってしまっている会話だが、むりに切断することも難しいので、ひとまとまりで取り出してしまった。

ライトは「ん、なんか見覚えあるぞ、ここ。」と言った。これは皆に聞こえるよう言った独り言というよりは、もう少し他人への働きかけの要素がみられる。というのは、もし明確に「同意」なり「非同意」などがある場合なら、このときに発話することが望ましいし伝えてほしい、というふうなしかたで言われているからだ。その点で、この発話は「認識の主張」であるのみならず「同意ないし非同意の要請」くらいにはなっている。「見覚えがあるか否か」は、そのくらいに他の誰もがコメント可能性があることに注意したい。

その期待される明確な「同意」とも「非同意」とも言えないような発話が、カグラによって突然なされた。「あ、あれ!」という指差しである。これはさらなる説明が後続可能であり、おそらく当人もその予定のある、準備的な発話である。ともあれ、このカグラの発話もまた「認識の主張」「発見の主張」といったものである。ではなにを「認識」「発見」したのかを次に説明しよう、という準備として発話されているように聞こえるのだ。

ライトが「有ったか?」とカグラに言った。確かに「あ、あれ!」という発話は、それを期待させるくらいの音調・声色で言われたものであった。いずれにせよ、その主張された「認識」や「発見」の候補を挙げる、つまり相手の返答を予測する、ということをここでライトは行なった。

それに対して、カグラは「んーん。」とまず否定しておいて「ヒカリが付けた目印。」と次に予定されていた説明を行なった。このヒカリが目印を付けた行為自体、他のメンバーは知らない可能性がある。たぶん、そうであっただろう。だが、そうであってもヒカリの意図はすぐにわかる。そういうふうにカグラは説明したのだ。

ヒカリが「さっきの分かれ道に戻ったってことだね。」と言った。これは言わば、自分の行為によってすぐにわかる帰結を述べたことになる。ふつうに考えればすぐにわかる内容なので、この発話は「確認」するという行為だと見なしたい。

ライト・トカッチが「えー」と言った。ここでライトとトカッチとで立場が違う。ライトの場合は「失意の表明」になるが、トカッチの場合仮にもライトを信じた結果なので、むしろ単純に「驚きの表明」だけのようにも聞こえる。

ミオがライトの肩をたたきながら「もーしっかりしてよ、ライト。全然覚えてないじゃない。」と言った。これは完全に「非難」である。ただし、頼るべき人物がライトしか居ないのも事実であり、失敗を単に責めるというよりは、次の成功への期待を込めての非難である。「しっかりしてよ」という箇所は特にそれに該当する。また、「非難」というのも覚えていないことへの非難というよりは、むしろ覚えていないのに自信満々だったことへの非難のようにも聞こえることに注目しても良い。「全然覚えてないじゃない。」という箇所がそのように聞こえるのである。

ライトの「んあー、おっかしいなあ。」という発話は、「覚えていないのに自信満々」という点に対応したような応接とも受け取れる。「弁明」とか「正当化」といった発話であるわけだが、その弁明がまた「覚えていたはずなのに」というところに照準されているのである。

「ヒカリが目印つけてくれてて良かったね。」とカグラがミオに言った。このカグラの発話が音声の調子その他から、どうも「ヒカリへの賞賛」のように聞こえる以上に「ライトへの非難」のように聞こえてしまうのが、筆者は気になっている。その聞こえ方に次のような背景があるからであろう。まず別にたとえばミオが目印をつけることを提案などしたわけではない。だからカグラのこの発話が目印をつけようと言わなかった他のメンバーへの非難であるわけがない。第一、自分自身もそうしていなかったのだ。だから非難に聞こえるとしたらそれはやはり「自信満々」という次元のほうに向けられていることだろう。ミオの非難が「自信満々」のほうに向けられて聞こえるのと同様に、カグラの発話もまた、ライトの「自信満々」のほうに向けられているように聞こえるわけだ。それは「慎重なヒカリ」との対比によるものであろう。ただ、ミオも程度の差はあれ慎重さは多少あった。慎重さに関してはヒカリだけが突出していたわけではない。そういう状況が背景にあったために、カグラの発話が「ヒカリへの賞賛」以上に「ライトへの非難」に聞こえてしまう、ということを、まあ仮説的に筆者は提案しておこうと思う。もっと良い説明は他にあるかもしれない。

しかし、次の展開では単純にヒカリを賞賛する方向に向かう。ミオが「ほんと、さすがだよ。」と言って、「なんだか陰のリーダーって感じ」と少しヒカリをこづいた。このとき「表向きのリーダー」として想定されているのがライトであることには、疑いの余地が無いだろう。そして、過去回で示されたミオの理解では、猪突猛進してしまいがちなライトを抑えるのがヒカリの役目である、のであった。このときがまさにそれに該当するわけだ。「さすが」という語がその箇所に該当するだろう。とは言え、その事を表現するために「陰のリーダー」という呼び方をするのはどこか唐突である印象は否めない。別に日ごろからそのように呼んでいたりした形跡もなく、ミオがこのとき突然思いついたものを口に出した、そのような印象である。

ヒカリが「陰って、俺ヒカリだし。」といって、ミオの提案を言わば「却下」したのも、こういった話題自体が、いくぶん唐突であり、ミオの突発的な思いつきだったことを傍証しているようでもある。

ところが、この話題におそらく日頃から高い関心があると思われるメンバーがいた。トカッチである。そのため、ここまでの話の流れを少し組み替えてしまうようにして、トカッチの発話がなされる。「リーダーか。そう言えばちゃんと決めてなかったけど、番号からいって一号のライトがリーダーだよね」。この発話によって、「陰のリーダー」という話題自体が前景から退き、「表のリーダー」の話になっていくことになる。まあ、はっきり言えばトカッチは、もし自分に適性があるのならリーダーをやりたくてたまらないのである。或いはリーダーというポジションに対する憧れが強いのである。だが、自信があるわけではまったくない。この時点では「リーダーに自分は積極的に向いていない」とまでは考えていないが、言わば「憧れているだけ」の存在であったのだ。ともあれ、このトカッチの発話は「確認」として行なわれている。当然同意されるものとして発話されているのだ。

ところがライトからは「え?いいよ、そうゆうの。」という返答が帰って来た。そんなこと以前に、ライトへの信頼というものが下がっている状況でわざわざそういった「確認」をして、それが簡単にメンバーの同意を得られると思っているトカッチがかなり間抜けではある。もっともライトの場合は、単純に「今はほかにやることがあるでしょ」的な態度である。要するに、トカッチの発話を却下して、自分の探索作業のほうに集中しているのである。「そうゆうの」という言い方も注意したい。トカッチの主張を「よくあるステレオタイプ」扱いしているわけだ。

そこでまさに「よくあるステレオタイプ」な返答をトカッチはしてしまう。「ダメダメ、グループ活動にはリーダーが必要なんだから。」という発話である。ともあれ、自分の確認の発話がライトに却下されたのを受けての、さらなる再確認というか、かねてからの主張の表明のようなものである。

ライトは相変わらず探索作業を続けながら、トカッチの方を見ずに「じゃあ、トカッチやれば。」と言った。これは一応形式的に言えば「代案の提案」だが、事実上は「話題の終了の要求」ともとれる。とにかく、ライトからすればこの話題は全く重要に思えず、他にやるべきことがあるのであった。

そこでなぜだか激しく狼狽したトカッチが「ぼーくはダメだよ。二番なんだし。」と否定しながら後ずさりをしてみせた。この箇所はかなり過剰なふうに描写されていて、逆説的にトカッチのリーダーへの憧れの強さのようなものを、視聴者(登場人物にも)感じさせうるものになっている。ともあれ、これも形式的に言えば、ライトが提案した代案の「却下」ではある。そして、ライトが態度ににじませていた「その話題終わりにしようぜ」にはちっとも対応していないのであった。

ヒカリが「番号は関係無いと思うよ。」と言った。この言い方は少し怒気を含んでいるように筆者には聞こえる。ヒカリもまた「リーダー」の話題それ自体が馬鹿らしいと考えているようにも見聞きできるように作られているのだ。もちろんヒカリが、自身が「陰のリーダー」と呼ばれたときにも、てんで無関心であったこともそこに含まれる。

リーダーという話題を最初に持ち出したミオからして、このトカッチのする「表のリーダー」の話題への関心は薄い。まずカグラが「うん、トカッチでいいと思う。」と言い、ミオがカグラに「だよね。」と言った。誰も「トカッチがいいと思う」とは言わないのである。「トカッチでいい」なのだ。その程度に、「表のリーダー」という話題などはどうでも良いのである。或いは少なくとも、この場面でその話題をすることには、トカッチ以外誰も関心が無いのである。「うん、トカッチでいいと思う。」というカグラの発話は、なので、「やり過ごす」「放置する」とでもいったものに近いのではないかと思う。ともかく、本来なら、ここでライトのリーダーとしての資質が問われて糾弾されても良さそうなのに、そういった展開にもならないのである。もちろん、そんな暇がないからでもある。サポート列車の捜索という、チケットからは急がされている任務があるのである。

トカッチがひとりごとのようにして「ぼくが、トッキュウジャーのリーダー」とつぶやいた。それを見ていたミオがヒカリに「まあ無理に決めることないけどね。」と言った。まあこのあたりが、ミオ・ヒカリ・カグラの期待水準なのだろう。例によって「まあ」を用いているので、「無理に決めなくてもよい」(消極的否定)から「無理に決めることなんてない」(積極的否定)まで一定の幅を持ちうる。で、どの場合であってもこの発話が、先にトカッチがなした「グループ活動にはリーダーが必要なんだから。」という内容に対する、「やんわりとした否定」になっていることが重要だ。これが「やんわり」というふうになりうるのは、「今は決める必要が無い」かそれとも「別にそもそも必要が無い」なのか曖昧にされているからである。ただ、ともかくトカッチの見解への否定として明確に打ち出そうというつもりも特にないわけだ。

ミオはカグラのほうに歩み寄って「あ、カグラ、お茶飲む?」ともちかけ、カグラはミオに「うん、ありがとう。」と返答した。これはごく単純に、「勧誘」と「応諾」とでもいったものだが、ともあれその場にしばらくとどまる予定を予期させるやり取りである。そして、「お茶を飲む」というのは、わりとどういった事態にも対応できる過ごし方のほうでもある。ライトやトカッチを特に見捨てたことにもならないし、気長に待とう、くらいの感じに受け取れる。ライトの探し物が時間がかかるかもしれないし、トカッチが何かまた言い出すかもしれない。そんな場合にでも対応できるような、そういった柔軟な対応のように思える。簡単にまとめてしまえば、それまでも多少「無駄なコース」をライトの案内で歩かされてきたのだからその「休憩のお誘い」にすぎないわけだが、それはいろいろな展開が予想できるなかでのまずまず柔軟な対応なのだと、そのように見受けられる。

全体的にみて、ミオが自身が言い出した「陰のリーダー」という話題にまったく固執しなかった態度が大きく影響しているやり取りだという印象だ。

  1. 一分間ほど声に出さずに考えていたトカッチは突然皆のほうを向いて「さあ、みんな元気をだして列車を探そおー」と大声で言った。
  2. 座ってお茶を飲んでいたミオが「え?もう?」とトカッチに言った。
  3. そこへ突然ライトが戻ってきて「ちょっと待った。」と言った。
  4. トカッチが早口・小声で「え?やっぱりダメ?」と言った。
  5. ライトが皆の方を向かずに「その前に片づけることが一つ有る。」と言って、さらに突き進んで行った。
  6. ライトはトカッチの横からさらに向こうを指差して「そこに隠れてるやつら。俺たちに何の用?」と誰も見当たらない方角に向かって言った。するとシャドーの手下が大量に現れた。
  7. そこにシュバルツ将軍がおもむろに現れて「気づいたか」とトッキュウジャーの五人に言った。続けて「はっはっはっはっは」と言った。
  8. しばらくのちにライトがシュバルツに対して「お前はこないだの…えっと」と言った。
  9. トカッチが「シュバルツ。」と言った。
  10. ライトが「そう、それ。で、何の用?」と後半はシュバルツに向けて言った。
  11. シュバルツは五人に対して「このシュバルツ、列車の軍団を作り上げるのが夢でな。サポート列車とやらをぜひ我が軍団に迎え入れたい。」と言った。
  12. ライトが「何?それで後をつけてたのか。」とシュバルツに言った。
  13. ヒカリが「でもなんでサポート列車のことを」と言った。
  14. シュバルツがおもむろに盗聴器の受信器を取り出した。そして五人に対して「貴様らの馬鹿話を聞くのは苦痛だったぞ。」と言った。そして、五人の前で、「現在レインボーラインの車内で話されている車掌とワゴンの会話」を聞かせてみせた。
  15. ヒカリが、その会話の内容にもあった単語を援用して「え、盗聴器?」などと言いなどしつつ、そのヒカリの発言も含めて五人は皆驚いた。また、盗聴器から聞こえてくるチケットの発話から、その仕掛けが「ばら撒かれた花びら」にあったことも判明し、また五人は驚いた。シュバルツは、小声だがやや勝ち誇ったように「んん」などとつぶやいた。
  16. 続けてシュバルツは五人に「だが、我々の尾行に気づいて同じ場所を歩き回っていたことは褒めてやる。」と言った。
  17. 五人は「え?」と一様に驚いた。
  18. しばらくの沈黙ののち、突然ライトは笑いだし「その通り。お前たちにサポート列車を渡さないための作戦だ。」と言った。
  19. カグラは「ライトすごい!」と笑みを浮かべて言った。トカッチもライトを驚きの目で見ていた。ミオとヒカリは「ないない」と否定的なリアクションを無言に近い状態でとっていた。
  20. シュバルツは五人に「ふふ。ではむりやりにでも案内してもらおうか。」と言った。
  21. ライトは「そうは行かない。みんな行くぞ。」と四人に言って、臨戦態勢に入った。四人は「ああ」などと言った。

トカッチはしばらくのあいだ声に出さずに考えていた。その内面は音声化されて放映されている。「トカッチでいい」というカグラの発言等を、「自分に対する信任」というふうに解釈をしたうえで、リーダーになる決意のようなものを固めていたのだ。

その結果として、「さあ、みんな元気をだして列車を探そおー」とトカッチは大声で言った。これは「指令」でもあるが、「自分がリーダーである宣言」も兼ねている。

座ってお茶を飲んでいたミオが「え?もう?」とトカッチに言った。この発話に「リーダーはトカッチでいいと思う」程度の発言を是認したことと、実際にリーダーとして「信任」することとの相違が表れているようにも見受けられる。また、ヒカリを「陰のリーダー」と呼んだことからもわかるように、ミオの考えるリーダー像とトカッチのそれとは相当にかけ離れていることも、想像に難くない。ともあれ、この言い方は「リーダーの指令」に対するリアクションとは明確に異なる。単なる、一メンバーに対する「異議申し立て」以上のものではない。

突然ライトが戻ってきて「ちょっと待った。」と言った。これは「誰に」向かって言ったのかはなかなか微妙ではあるが、その場に居る他の四人全員は少なくとも含まれているだろう。ただ、「待った」なので、そのとき言動をなしていた者、特にトカッチに対してであると受け止めるのはごく自然であり、トカッチも「え?やっぱりダメ?」とすぐに応接している(この発話は「確認」と呼べるだろう。)。ただこの発話が微妙だと言える理由は、これが、発話を向けている相手だけでなく、それが聞こえている相手(つまり隠れているシャドー)に聞こえるようになした発話でもある、ということだ。いずれにせよ「ちょっと待った。」もまた「異議申し立て」の一種である。

次のライトの発話「そこに隠れてるやつら。俺たちに何の用?」は、その反対であり、その隠れている者に向かって言った発話であり、他のトッキュウジャーの四人には聞こえるようになした発話である。これは形式的には質問であるが、そもそも相手の存在に気づいていることの「通告」の面が強い。そして、若干の「挑発」でもある。「出てこいよ」というわけだ。

そこで最初シャドーの手下との向かい合いになったときに、シュバルツが登場した。「気づいたか」と言い、続けて「はっはっはっはっは」と言った。「気づいたか」という発話は「隠れてる」というライトの使った語に対応するものであり、ライトのなした「通告」をまず認識したことの主張である。続けての「はっはっはっはっは」は、ライトの発話に含まれていた「挑発」の要素、「出て来いよ」に対する応接とも受け取れる。「挑発し返した」とでも言えようか。シュバルツからすると、一度トッキュウジャーに「いずれ戦う」という予告をしているので、その準備発話にも聞こえるような発話だとも言える。

なので、シュバルツからすると「あのとき予告をした者」であることに気づいてもらわないと始まらない。実際ライトは「お前はこないだの…えっと」と言った。これは認識の主張であり、かつ、それが充分ではないことの主張でもある。不充分であることは「えっと」で提示されている。この箇所にはトカッチが補完的に応接した。「シュバルツ。」と言ったわけだ。ライトがそれを、自分の発話への補完として受け止めた。「そう、それ。」の箇所である。この一連のやり取りは、修復と会話分析で呼ばれるタイプのものである。「修復の要請→修復→修復の認識」とでもいった流れである。

ライトはこのやり取りを挿入的に扱いながら、シュバルツに「で、何の用?」と質問した。相手が問答無用で攻撃してくるよりも、御託を並べるのを好む者であることが、看取できたのかもしれない。実際、シュバルツはそのあと、自分の「意図」を丁寧に説明してしまうのである。

シュバルツは五人に対して「このシュバルツ、列車の軍団を作り上げるのが夢でな。サポート列車とやらをぜひ我が軍団に迎え入れたい。」と言った。この発話には二つのポイントがある。一つはサポート列車の存在をすでに知っていることの「通告」であり、いわば軽い「脅し」でもある。その程度のことは知っているぞ、というわけだ。もう一つは、「だから今すぐお前たちを死なせることはしない」という「予告」の要素を含んだ「宣言」である。今すぐ死なせてしまったら、サポート列車のありかがわからないからだ。

ライトが「何?それで後をつけてたのか。」と発話したが、それは先の説明でいえば後者のほうに対応したものだ。つまり「サポート列車を迎え入れたい」という「宣言」内容を前提としたうえでの「質問」である。「質問」ではあるが、答えは「yes」に決まってはいる。実際、シュバルツからの即座の返答はなかった。ただ、分かり切った質問であっても、話を進める意義はある。

それに対してヒカリの「でもなんでサポート列車のことを」という「疑念の表明」は、先の説明でいえば前者のほうに対応したものだ。つまり、サポート列車の存在をすでに知っていることの「通告」に応接したものだ。シュバルツが言いたいことはむしろこちらのようであり、わざわざ盗聴器の受信器を取り出して、盗聴の事実を自慢げに披露した。「貴様らの馬鹿話を聞くのは苦痛だったぞ。」という発話も、「自慢」である。そうでなければ、わざわざそんな見せびらかしはしないはずだからだ。

ヒカリの「え、盗聴器?」というのは、自身がなした「疑念の表明」に対する「返答」への応接である。この場合、「驚きの表明」くらいになろうか。シュバルツが勝ち誇ったように小声で「んん」などと発声したのも、それも含めた五人の驚きぶりに対応した「満足の表明」である。

続けてシュバルツは五人に「だが、我々の尾行に気づいて同じ場所を歩き回っていたことは褒めてやる。」と言った。この「だが」という逆接に注意しておこう。「盗聴される」というのはいわば「用心が足りない」事態であるのに対して、「尾行に気づく」というのはちょうどその真逆である「用心が足りている」事態である。なので、この二つの在り方を同時に体現していたトッキュウジャーに対しては、「だが」という逆接でもって表現するのがふさわしい。「盗聴はされたが、だが、尾行には気づいた」というわけだ。これはまあ、第三者がみれば単なる「買いかぶり」であるが、シュバルツの行為としては「部分的・限定的になら相手を評価する」とでも言った発話であろう。というか、もう少し言うと、「お前たちが我々の尾行に気づいていることだって、こちらは気づいているぞ」というそういう、先回りした一種の「牽制」でもある。ただし、シュバルツの買いかぶりには一定の根拠がある。それは尾行していることがライトに見抜かれて指摘された事実があることだ。だとすれば、そのライトが「最初から」尾行に気づいていて、素知らぬ顔をして振舞っていたとしてもおかしくはない。だからそこまで根拠のない「買いかぶり」ではなかったと言える。

五人は「え?」と一様に驚いた。このあと、四人はライトの顔を覗き込むような動きをした。「え?」という驚きは「驚きの表明」というように意図的行為とも言いうるが、そのあとの、ライトの顔を覗き込みその反応を確かめようとする動きは、とりわけ意図的行為だと言える。示し合わせたわけでもないのに、四人が同じような振る舞いに出る点が興味深い。で、これは敵と相対しているという状況が関係していると思われる。もし敵が居ない状況なら、ライトに実際に「問いかける」ことをやろうという動きなのである、だが実際には敵がそこにおり、そこまでの余裕が無い。そういう制限下での振舞として、「皆が一斉に驚きを表明し、かつ、ライトの反応を確かめようとする」というふうに出たのだと記述できるだろう。いずれにせよ、ここではシュバルツの発話を「尾行に気づいていることにまで気づいているのだという牽制」として受け止めたメンバーは居なかったのだ。それ以前の問題として、「部分的になら評価する」に対する応接としての、「本当のところ、ライトの意図はどうなのか」までしか気にしない振舞だった。つまりシュバルツの言っていることが正しいのかそうではないのか(買いかぶりなのか)止まりでの振舞だった。そういうことになろう。

しかし、四人がそこまでしか考えず、のみならず、ここでライトを同様に買いかぶったメンバーが半分いたりしたことなども、結果的にはむしろプラスに働いたともいえる。そのほうが、よりいっそう「ライトが素知らぬ顔で、敵を欺くにはまず味方から、というセオリーで動いていた」ように見えるからだ。

ライトはしばらくの沈黙ののち笑い出し、「その通り。お前たちにサポート列車を渡さないための作戦だ。」とシュバルツに返答した。つまり、「部分的になら評価できる」(その実は買いかぶり)という発話を、是認したわけだ。しかし、よく考えるとこの対応は少し奇妙にも思われる。というのも、もし本当に尾行に気づいていてわざと道を間違えたふりをしていたのなら、そのことを隠すほうが自然な対応のように思えるからだ。だからこう考えるのが良い。シュバルツの発話がたんに自分を買いかぶっただけのものではなく、「お前たちが我々の尾行に気づいていることだって、こちらは気づいているぞ」という牽制行為でもあるのであり、このライトの応接はおそらくそれにこそ対応・照準したものと見なすことができるのだ。つまり、「尾行に気づいていることにまで気づかれた」ことくらい大したことではない、という態度を示すことが、一つの対抗手段となるわけだ。いわば、相手の牽制に対して、「全然大丈夫という態度」いわば「虚勢を張る」、といった行為をライトは行なったと見ることができるのである。シュバルツがのちに使う言い方をすれば「ハッタリ」である。

このライトのハッタリに関して、カグラとトカッチはやたら素直に受け取り、ミオとヒカリはハッタリであるとはっきり認識したため、四人の反応はばらけた。おそらくこのことも結果的に彼らに良い結果をもたらしたと思える。というのも、シュバルツの発想では、ライトは「敵を欺くにはまず味方から」という作戦をとったとおそらく思っているため、四人の反応がばらばらになることにも違和感が無いからだ。ともあれ、カグラはライトを賞賛するという発話行為をなし、トカッチはライトに感心するという反応を示し、ヒカリとミオは、ライトのハッタリの発話に対し「否認」的な態度を示した、ということになる。

シュバルツは「ふふ。ではむりやりにでも案内してもらおうか。」と言った。「むりやりにでも」というのは、ライトのほうがサポート列車の件に関して「渡さない」「教えない」という意思表示をはっきり提示したことに、対応している。「わざと道に迷ったふりをするくらい」に「渡さない」「教えない」意思があるはずだ、というわけだから、そういう言い方になる。その意思に対する「却下」がおもに「むりやりにでも」という箇所でなされ、「案内してもらおうか」という箇所で、「命令」をなした、という、そういった記述になるだろうかと思う。

ライトは「そうは行かない。」とそれを「拒否」した。そして「みんな行くぞ。」と会話でのやり取りを終了するように仕向け、臨戦態勢に入るべく「指令」をした。このあたり、リーダーの行動以外の何ものでもないわけだ。

  1. 片足で踏みつけられ刀をつきつけられたライトに対して、そのシュバルツは「サポート列車に案内してもらおうか。」と言った。
  2. ライトは「場所を忘れた。」と言った。
  3. シュバルツは「ふふ」などと笑いながら、より一層強く踏みつけた。ライトが「痛!」などと叫んだ。
  4. シュバルツは「思い出したか」とライトに言った。
  5. ライトは「今ので完全に忘れた。」と言った。
  6. シュバルツはまた「ふふ」などと笑いながら「いつまで強がって居られるか」とライトに聞こえるように言った。

シュバルツはライトを踏みつけにして刀をつきつけて、「サポート列車に案内してもらおうか。」と言った。これは「命令」したのである。

ライトが「場所を忘れた。」と答えた。これは「命令」を「拒否」したのである。注意するべきことは、シュバルツはおそらくライトを本当に殺したりはできそうにない、とライトが感づいているだろうことだ。ライトを殺してしまったら、シュバルツには自力で探し出す能力がない、とライトは見ているはずなのだ。その強みというものを、ライトは意識しているように見受けられる。

シュバルツは「ふふ」などと笑いながら、より一層強く踏みつけた。ライトが「痛!」などと叫んだ。これは一種の「脅し」であろう。殺すことはできないにせよ、それなりに苦痛を与え傷めつけることくらいならできるだろうし、何なら手足を切り落とすくらいだってできるだろう。そういうふうに、シュバルツのほうにも選択肢がそれなりにいろいろとあるにはある。なので、それを思い知らせて「脅す」こともするだろう。この踏みつけた行為なども、その第一歩のようなものと位置づけることもできよう。

シュバルツは「思い出したか」とライトに言った。これは「相手の意思を尋ねた」のである。答える気・案内する気があるかどうか、を尋ねたということだ。

ライトは「今ので完全に忘れた。」と言った。これは、相手の質問に対して、「その気がない」という返事をした、という行為でもあるが、再度の拒否であり挑発でもある。特に「今ので」というふうにシュバルツに責任を押し付ける言い方が、挑発に聞こえるわけだ。さて、このときのライトがいくぶん命懸けでやっていることに注目したい。ライトは完全にではないにしてもけっこう忘れているのは事実だ。だからもし「ならば殺す」と言われたときに、「じゃあ、教えましょう」ということはこの時のライトにはできないのである。思い出せるかどうかは運次第といった状態にあるからだ。確かにシュバルツは自力で探し出す能力が無さそうという点では分が悪いにせよ、ライトのほうが自力で探し出せる保証があるというほどではないのである。なので、もしシュバルツが逆上したり短気だった場合、ライトはそれなりに充分危機になる。そのことを踏まえたうえでの、ライトの多少命懸けの「拒否」なのであった。

シュバルツはまた「ふふ」などと笑いながら「いつまで強がって居られるか」とライトに聞こえるように言った。これは「再考の促し」とも言えるだろうし、「最後通牒の予告」だとも言える。できれば、シュバルツとしてはライトに「再考」して考え直してもらい「白状」してほしいのである。そのほうが楽だからだ。だが、それはいつまでも待つということは意味しない。「白状するなら今のうちだぞ」「後になって後悔してももう手遅れだぞ」という通告をシュバルツはいつでもできる立場にあり、その展開を或る程度「予告」したということになろう。いつでも最後通牒くらい出せるという予告なわけだ。この種の番組によくあることだが、このシュバルツという者も、どうやら「自分が一方的に強い立場」に在ることに多少自己満足してしまっている気配なのである。

今度はトカッチを人質にとり刀をつきつけたシュバルツが、ライトと相対する。

  1. ライトは「トカッチ!」と叫んだ。
  2. シュバルツは「動くな」と言った。
  3. トカッチは「ライト」と小声で言った。
  4. シュバルツは「自分では思い出せなくても、仲間の命がかかれば話は別だ。それとも本当に忘れたか。」とライトに言った。
  5. ライトはシュバルツに「待て」と言った。しばらくのちに「思い出した。」と言った。
  6. トカッチは「ライト、ダメだ!」と言った。
  7. シュバルツは「ふふ、では、案内してもらおうか。」とライトに言った。ライトは無言でうなずいた。

ライトの「トカッチ!」という発話は、トカッチの危機的状況に接して思わず叫んでしまったというものに近い。意図的行為として定式化するのなら「心配してみせることをした」とでもいったものになるだろう。たんなる「心配した」と少し違うのは、相手の反応が発話で得られることは特に期待されていないことだ。要は無事そうに見える状況であればそれで良いのだ。

シュバルツは「動くな」と強めに、そして急いで言った。これは直感的に、ライトに向けて言ったように聞こえるはずである。トカッチはすでに動いたら危険である状況にされているからだ。そして、もしかりにそう言わなければいかにも動いてしまいそうなのは、トカッチを救助しようとするライトのほうだからだ。それは、先ほどの「トカッチ!」という「心配してみせることをした」発話(というか叫び)に対してのものである。そういうわけでこの発話は、シュバルツがライトに「命令」した、あるいは「牽制」したというふうに定式化されよう。実際、この発話ののち、ライトは小声で何か呼吸音をあげていて、それはこの発話に対応した遅疑逡巡と見られる。

トカッチは「ライト」と小声で言った。この発話によって、トカッチが少なくとも声を出すことや発話することができそうな程度に、「無事」であることが提示されたことになる。それは、ライトがトカッチを「心配してみせた」ことに対応した応接ともなるだろう。むしろ、声色からすると、トカッチがライトを「心配してみせている」ようにすらも聞こえる。それは、トカッチがライトを助けようとしてうまくいかなかったことも関係しているかもしれない。ともかく、相互に危機的状況にある場合に、お互いに相手の名前を呼ぶということが「或る程度の無事の表明」や「相手の無事の程度への心配」という行為になりうるのであり、このあたりのやり取りにも、その要素が見られるのである。

シュバルツは「自分では思い出せなくても、仲間の命がかかれば話は別だ。」とライトに言った。これはライトもすでにわかっているはずのことを述べているのだから、「状況説明」のような発話行為ではない。ただシュバルツの意図は必ずしも自明ではない。要するに、ここですぐにトカッチを邪魔者として切ろうとするか、それともトカッチを人質にとろうとするかは、必ずしも自明ではない。そのような状況で、シュバルツがなしたこの発話は「意図の説明」とでも定式化できるだろう。トカッチは人質扱いとする、という意図を表明したわけだ。

シュバルツは続けて「それとも本当に忘れたか。」とも言った。これは要するに、ライトに「応答の促し」をしているのである。というのも、yesかnoかで答える質問をされれば、答えなかった場合には、その無答という行為が顕在化することになるからだ。そのようにして、ライトに「応答」を促すことで、結局は「次の行動」をとらせようという、そういう発話であると定式化できるだろう。シュバルツは事態を進展させたいわけだ。

ライトはシュバルツに「待て」と言った。ちょうどシュバルツの刀が何か音を立てて動こうとしたときと同時であった。その意味では、シュバルツの刀が音を立てたことも、シュバルツの意図的行為であった、一種の「早く答えろ」という促しであったのかもしれないと見なせるほどだ。ともかく、ここでライトは、相手の質問に対して何らかの応接をする意思だけは見せなければならなくなったわけだ。その応接として、時間稼ぎにもなるような「待て」という発話をなした。

ライトはそのしばらくあとに「思い出した。」と言った。yesかnoかで答える質問に回答することで、相手の促しに応接する態度を見せたのである。またのみならず、トカッチを人質として保護する決断をも表明したのである。のちにヒカリも同様のことを述べているが、要はここでライトは「時間稼ぎができる」選択肢をとったのである。いったんは敵の要求に屈したような態度を示しておいて、それからのしばらくの間に「次の対策」を考案しよう、ということができるような選択肢をとったのだ。

トカッチは「ライト、ダメだ!」と言った。おそらく、その「時間稼ぎができる」というメリットについては、気が回っていないのだろう。少なくともそう見える態度になってはいる。ともあれこの発話は、ライトが敵の要求に屈したように見える、という点に照準してなされている。それを定式化するなら、トカッチはライトを「制止しようとした」とでも記述できるだろう。

シュバルツは「ふふ、では、案内してもらおうか。」と言った。「では」という箇所から、「ライトがトカッチを人質として保護する」表明をした、という受け取り方をしたことがわかる。これは、言語上は明確ではないものの、ライトがシュバルツに言わば「約束」をしたのにも近いかっこうになっている。なので、「案内してもらおうか。」という箇所はその「約束の履行」を要求する、といった行為になっている。そして、ごく軽くだがそれに対してライトは無言でうなずいたので、シュバルツにほんとうに「約束」をしてしまったとも言いうるかっこうになった。

シュバルツの攻撃によって遠くに飛ばされていたミオとカグラがヒカリが出会うことができたときの場面である。

  1. ミオが「ヒカリ、だいじょうぶ?」とヒカリに言った。
  2. ヒカリが「ああ、シュバルツの奴、完全にライトがサポート列車の場所を知ってるって思ってるね。」とミオたちに言った。
  3. カグラが「え?そうなんでしょ。シャドーが付いてきてるからわざと道間違えただけで」と言った。
  4. ミオがカグラに「んーん、あれは本気で覚えてないよ。」と言った。
  5. カグラが「え。」と言った。
  6. ヒカリが「でもそのおかげで時間が稼げてるとも言える。ただ、バレたらその瞬間で終わりだけど。」と言った。
  7. カグラが「そんな…」と言った。
  8. ミオが「その前に何か手を考えなきゃ。」と言った。
  9. ヒカリがうなずいた。

お互い遠くに飛ばされていたので、各自の状況は見てすぐにわかるとは限らない。なので、ミオはヒカリに対して「ヒカリ、だいじょうぶ?」と言った。「気にかけた」ないし「心配してみせた」というところである。もっともヒカリからは即答が得られ、まったく心配ないことがわかる。

ヒカリが「ああ、シュバルツの奴、完全にライトがサポート列車の場所を知ってるって思ってるね。」と即答した。「ああ」の箇所だけがミオへの応接で、あとは状況説明や情報の提供といった行為になっている。ばらばらになっていた者どうしが、自分の見聞きした情報をお互いに提供するのは、ごく自然に行なわれることだ。ヒカリはシュバルツの言動を少し目撃していたので、推測ではなく情報としてこれを述べることができるのだ。

カグラが「え?そうなんでしょ。シャドーが付いてきてるからわざと道間違えただけで」と言った。カグラがライトのハッタリを信じ込んでいたことは、態度にはすでに表れていた。だが、それをまだ話し合える状況で話したことはなかった。なので、ここで初めて自分の「信念」を披露するというような行為をすることになる。

その「信念」は、ミオによって「否定」された。「んーん、あれは本気で覚えてないよ。」と述べたわけだ。しかし考えようによっては、これだって「信念」ではないのか、というふうにも言いうるだろう。実際、ライトが尾行になら気づいたのは事実だ。なのに、道を間違えたのを故意や作戦だと見なすのは、なぜ「信念」(つまり「買いかぶり」)になり、単なる失敗だというほうが(「信念」でもあるが)「事実」(でもある)となるのであろうか。少しわき道に逸れるかもしれないが、その点を少し考察しておこう。

たとえば、視聴者のなかにはこう考えた者が確実に居たはずだが、「目印としてつけておいたけん玉の替えひもも、シャドーの手下によってすり替えられた」という可能性だってある。だとすると、同じ場所をライトが道に迷って回っていたということ自体が、シュバルツによって仕組まれた「嘘」かもしれないわけだ。本当はライトは同じ場所になど来ておらず、ひもはシャドーの手下によってすり替えられた偽の目印だった、というわけだ。そういう解釈が可能なのに、誰もそう言わないし、実際にどうやらそうではないらしいと言えるのはなぜか。と言えば、そのような「高度な」作戦と、サポート列車のありかを知りたいがために、わざわざ盗聴したり尾行するという「素朴な」作戦との、「レベルが違う」からにほかならない。シャドーは単なる暇な愉快犯ではない。実利のあることしかしないはずなのだ。だとすれば、ひもを付け替えて相手が迷っているように騙すくらいに巧妙なやつらなのだから、サポート列車くらい尾行せずとも独自に探し当てるだろう、そうしないということはそこまでのレベルの高い悪人ではないのだ、というふうに言えるのだ。同じことがライトの側にも言える。尾行には確かに気づくことができた。しかし、最初から気づいていたわけではなかった。そう言い切れるのは、「同じ場所」に戻ってきてしまったときのリアクションでの自信のなさからや、ヒカリがやったような「目印をつける」などの「対策」を特に打ち出さなかったからにほかならない。「最初から尾行に気づいてあえて迷ったふりをする」のと、それ以外の行動とにレベルのギャップがあるのだ。そう筆者は考える。なので、それらもあって、ヒカリとミオは、ライトを買いかぶらなかったし、そちらのほうがより真実らしく、第三者や視聴者からみても見える、とそういうわけなのだ。そのように思う。

いずれにせよ、カグラやトカッチやシュバルツの買いかぶりよりは、ミオやヒカリの見方のほうが、より真実らしくはある。そして、カグラにしても、シュバルツが買いかぶらなければ、そうは見なさなかったことはすでに確認したとおりである。「ヒカリが目印つけておいてよかったよ」とカグラも最初はやはりライトが失敗したと見なしたのである。だから、カグラの買いかぶりは、そう強い根拠のある信念ではない。そのため、ミオが「んーん、あれは本気で覚えてないよ。」と信念を述べたときにも、「言い返す」ことはしなかったし、おそらくできなかった。なので「え。」と驚きの表明だけを行なった。

ヒカリがすぐに「でもそのおかげで時間が稼げてるとも言える。ただ、バレたらその瞬間で終わりだけど。」と言ったため、ライトが意図的であったかなかったか問題は、そこで終了した。それは「バレたらその瞬間で終わりだけど。」という発話で、「リスク予測」を提示して、「次のステージ」を明らかにしたからだ。ヒカリはシュバルツにあまり接しておらず、その性格などもさほどは知らないはずだが、少しは他のメンバーよりは目撃しているためか、シュバルツが「用があるから人質を生かしているだけであって、用がなければ殺す」というタイプである可能性に照準している。そのリスク可能性を問題提起の形で述べたのである。

カグラが「そんな…」と言った。これはヒカリへの「異議申し立て」とかではなくて、やはり「驚きの表明」くらいのものであろう。

ミオが「その前に何か手を考えなきゃ。」とヒカリの問題提起に対応した形で、さらなる「議題設定」を行なった。しかしともあれ、この段になって、ようやく、シュバルツの買いかぶりに対して、ハッタリで対抗したライトの行為の「メリット」というものを彼らもまた認識することとなった、と言える。「時間稼ぎ」にはなっていたのである。

人質にされたトカッチが自己嫌悪を声に出して話し始めたので、「うるさいから黙らせろ」ということで、シュバルツが手下にトカッチへの暴行を命じた。その場面である。

  1. ライトはシュバルツに対して「それ以上やるなら、サポート列車の場所は教えない。」と言った。
  2. シュバルツは「そんな脅しを言える立場かどうか考えるがいい。」とライトに言った。
  3. ライトは「考える余裕がない。」とシュバルツに言った。
  4. シュバルツは「トッキュウ1号も案外小さい。この程度でそこまで追いつめられるとは。」とライトに言った。
  5. 手下と戦闘しながらライトはシュバルツに、「違う。ここに余裕が無いのはお前を一発やり返すイメージで一杯だからだ。」と、「ここ」として自分の頭部を指しなどしながら言った。
  6. シュバルツはライトに「ふふ、そういうハッタリは嫌いではない。」と言った。
  7. シャドーの手下は、トカッチへの暴行をやめて、立ち上がらせた。
  8. シュバルツは誰に対してか、「な、急げ。私もそう気が長いほうではないからな。」と言った。
  9. ライトは「焦るなって。もうすぐだ。」とシュバルツに言った。ただライトはその場所を覚えていないため、この発言が一種のハッタリであったことが、ライトの内心が音声化されることで視聴者には伝達される。

トカッチへの集団暴行のような扱いをみて、ライトは「それ以上やるなら、サポート列車の場所は教えない。」とシュバルツに言った。この言い方は多少奇妙である。というのも、「教えないならもっと暴行をひどくしてやる」という態度に出ることも想定可能なはずだからだ。相手が素直にのみそうな要求をライトはしていないのである。そして、ここでのライトの主眼は、とにかく暴行をやめさせることにある。ただし、だからといってすでに述べたようにライトはそこまで完全にサポート列車の場所を覚えているわけではなく、むしろ記憶は相当に不確実なので、暴行をやめさせるために「しようがないなあ、教えるか」と教えるふりをする、いう選択肢をもっていないのである。ということは、もしシュバルツが冷静に考えれば、「ほんとうはライトはちゃんと覚えていないのかもしれない」とこの時点で想到しうる状態なのだ。ともあれ、ここでのライトはいっけん暴行をやめさせるための「取引」をしているように見せながら、実は、それが「取引」になっていないため、単に「暴行をやめさせようとする」という行為にだけなっているのである。

シュバルツは「そんな脅しを言える立場かどうか考えるがいい。」と言った。ライトの発話を「脅し」というふうに定式化したわけだ。そしてにもかかわらず、形式的には「再考の促し」のような言い方になってはいるものの、実際には「そんな立場にはない」と断定・宣告しているのである。実際この段階でライトのほうに何も有利な点が無い。ただ、シュバルツは別にトカッチを暴行してそれが楽しくてしようがない、という愉快犯ではないし、そのことで「闇」が生まれるわけでもない。別にその暴行に彼にはメリットもないので、早く次のステージへ話を進めたいのだ。だがシュバルツのほうにしても決定的な切り札はもっていないのだ。なので、このようないくぶん停滞したような「宣告」どまりになっているのだろう。

ライトは「考える余裕がない。」とシュバルツに言った。これはシュバルツの「宣告」に対する「却下」とでも定式化できるだろう。

これに対するシュバルツの応接が特殊である。「トッキュウ1号も案外小さい。この程度でそこまで追いつめられるとは。」と言ったのである。「余裕がない」という発話を、自分の発話に対する「却下」と受け止めずに、文字通りに受け取ったのである。実際、先にも見たように、ライトやトカッチの側に「余裕」や「切り札」は無いのである。むしろ、「ほんとうはサポート列車への行き方が自信が無い」ことが発覚すれば、より一層危機になりうるほどなのである。だが、その点にはシュバルツは気づいていない。なので、おそらく「案外小さい」という言い方によってライトに「挑発」をし、そこから何か新しい展開を引き出そうというくらいの発話のように見受けられる。

ライトは「違う。ここに余裕が無いのはお前を一発やり返すイメージで一杯だからだ。」と応答した。シュバルツの「挑発」に対して「挑発」で返す、いわば「応酬」した、とでもいった対応をしたのである。

シュバルツはライトに「ふふ、そういうハッタリは嫌いではない。」と言った。いわば「部分的になら評価できる」という応答をしたのである。このライトの回答がいたく気に入ったかどうかはわからないが、トカッチへの暴行をやめるようにシュバルツは合図を出してやめさせた。もともとシュバルツにとって、メリットの無い単なる脅しでしかなかったのである。トカッチの自己嫌悪トークがうるさくてしかたが無かったからやっただけのことであった。

続けてシュバルツは「な、急げ。私もそう気が長いほうではないからな。」と誰にともなく言った。これは「命令」である。少なくともライトはそう受け取り、自分に対する発話として応答した。「焦るなって。もうすぐだ。」とである。この「もうすぐ」は完全にハッタリである。実際にはどのくらい所要時間がかかるのかの見込みがたつほどの記憶は無いのである。ともかく、ライトは「命令」に対する「応諾」を行ない、簡単な状況説明をした、という記述になろう。

  1. ミオが「私たちが先にサポート列車を見つける?」と言った。
  2. ヒカリが「それしか手はない。」と言った。
  3. カグラが「でも上も結構大きいよ。見つかるかなあ。」と言った。
  4. しばらくのちにヒカリが二人を向いて「手がかりはあの時のライトにある。」と言った。
  5. カグラとミオは黙って顔を見合わせて、不審そうな顔をした。

ミオが「私たちが先にサポート列車を見つける?」と言った。この言い方だが、音声だと半疑問形と呼べばいいのだろうか、「私たちが先にサポート列車を見つける(ってこと)?」というような引用的な話し方に聞こえる。つまり、この前段階にヒカリがその発案をして、それに対して確認的にそれをミオが繰り返して聞いた、というふうに聞こえるのである。なので、放映されていないシーンでおそらくヒカリが「提案」をし、それの「確認」をミオが行なった、というふうにこのシーンは聞こえるし定式化できそうだ。

ヒカリは「それしか手はない。」と言った。なのでやはりヒカリは最初からその発案に賛同していておそらく提案者でもあることが、うかがえる。これはミオの「確認」の発話に対する、「強い肯定」とでも言えるだろう。

カグラが「でも上も結構大きいよ。見つかるかなあ。」と言った。この場合の「上」とはおそらく「山道の上のほう」くらいに受け取って良いと思う。で、これは「異議申し立て」というには少し強いので、「疑念の表明」くらいに定式化できると思う。ヒカリの提案は尤もなのだが、実現可能性がどのくらいあるのかは、はっきりしないからだ。

しばらくのちにヒカリが二人を向いて「手がかりはあの時のライトにある。」と言った。これはその実現可能性についての「疑念」への返答の「予告」である。つまり、後続してその「疑念への返答」が来るだろうという期待をさせるべくなされた予告である。これだけだとまだ予告だけで「内容」はほぼ示されていないので、ミオとカグラは不審そうに顔をして互いに見合った。この「予告」が「あの時のライトにある」という言い方であることに注意したい。ということは、それはミオやカグラも知っているはずの事柄だ、ということになる。ミオとカグラが不審そうな顔をしたのは、その「自分も知っているはずの事柄」がわからない、ということに対応した反応なのである。

タンクーレッシャーを発見したヒカリと、ライト・トカッチとの通信での会話である。

  1. ライトが対面でトカッチに「あれだ、俺が見た列車」と言った。
  2. ヒカリが「タンクーレッシャーだよ。なんとか先回りできた。」と二人に言った。
  3. トカッチが「ヒカリ!でもどうして。」とヒカリに言った。
  4. ヒカリが「ライトが山で採って来た食料に筍があったからね。竹林の近くにあるんじゃないかって思ったんだ。」と二人に言った。
  5. ライトが「やるなあ、さすがヒカリ。」とヒカリに言った。
  6. トカッチが、通信ではなく対面的に、ライトに「やっぱり陰のリーダー。」と言った。
  7. ライトが共犯者的な笑みを浮かべてトカッチに同意した。

ライトがトカッチに言った「あれだ、俺が見た列車」という発話は、(変な呼び方に思えるが)「紹介」とでも呼べるのではないかと思う。というのは、それまでのあいだずっと話題になっていたが、ライト以外は見たことがなかったものを、そのライトが第三者に伝えるというのは、やはり「紹介」が筆者の思いつくなかではいちばんしっくりくる語であるからだ。

そこへヒカリから通信で「タンクーレッシャーだよ。なんとか先回りできた。」と言われた。これは「報告」という定式化で良いと思う。この報告がないと、何者が操縦しているのかわからないタンクーレッシャーを目撃するだけになってしまい、それだけだと不安である。シャドーの手に渡ったのかもしれないわけだからだ、なので、操縦している者自身がそれを、仲間に伝えるのが言わば義務になる。その義務としての「報告」である。

トカッチが「ヒカリ!でもどうして。」と通信で言った。前半はまあ「賞賛」だと言えるが、後半はどういう言語行為なのだろうか。「どうして」で尋ねられているのが「先回り」の件であることは間違いない。実際に目撃したライトとほとんど同時かそれ以上の早さで見つけることができるのは、不思議である。それができないからシュバルツは今回のような尾行や人質行動に出たほどなのだ。結局、後半はたんなる「疑問の表明」というくらいで良いと思う。戦闘中にしては呑気な気もするが、しかしこの戦隊ではその程度の呑気さはよくあることでもある。

ヒカリは「ライトが山で採って来た食料に筍があったからね。竹林の近くにあるんじゃないかって思ったんだ。」とその「疑問」への「返答」をした。視聴者からすればその竹林をどうやって見つけたんだ、と聞きたくなるところだが、そこはまあ自然科学や地理の知識によって見つけたのだろう、などと勝手に推測しておけば良い。また、先にヒカリとミオとカグラが会話をしていた場所が河原であったことを想起し、結局ライトが獲ってきた「食料」のありそうな場所から優先的に探していたのだろう、と最初から彼らがちゃんとした方針に基づいて探索していたことを推察することもできる。

ライトが「やるなあ、さすがヒカリ。」と、これも「賞賛」した。この「さすが」の中には、先ほどのけん玉の替えひもの件も含まれているだろう。ただし、よく考えると、ヒカリたちが頭脳戦によってサポート列車を探し出すことが無事にできたのは、ライトとトカッチが体を張って人質的な扱いを受けて時間稼ぎに成功したからでもある。或る程度偶然ではあったが、結果的にはチームプレイの勝利でもあったのだ。

その後トカッチは「やっぱり陰のリーダー。」と、ライトにだけ対面的に言ってライトもそれに応じて共犯者的な笑みを浮かべた。トカッチが先ほどは「陰のリーダー」の話題に関心をもたなかった点を考えると多少唐突ではある。だが、つい少し前までは自分がリーダーでいるつもりでいたため、その「表のリーダー」である自分と対比して、より手柄を立てたヒカリに関して、つい何か言ってみたくなった、といったあたりだろうか。トカッチの考えるリーダー像というものもずいぶんとステレオタイプなもののようなので、そのステレオタイプにあまり合致していないがしかしチームへの貢献が大きい者に対しては、屈折した形で「陰のリーダー」と名指したくなるのかもしれない。ともあれ、ここでのトカッチの発話は「軽いからかい」くらいのものであろう。

目の前の敵を一通り殲滅させたあとの、ライトとトカッチの会話である。

  1. ライトが「トカッチ、さっきはほんとナイスサポート。助かった。」とトカッチに言った。
  2. トカッチが「ライトの顔を見てたら、あの先が列車の場所だってわかったから、集中してたんだ。」とライトに言った。
  3. ライトが「さすが。」とトカッチを指差して言った。
  4. トカッチが「ぼくわかったよ。ぼくにはこういうサポートのほうが向いてる。リーダーなんてタイプじゃない。」とライトに言った。
  5. ライトが「だからさ、もういいよそうゆうの。陰のリーダーが居るなら、サポートが得意なリーダーも居て、そん時そん時で必要なやつがリーダーになればいいんじゃないの。」とトカッチに言った。
  6. トカッチが「必要なやつが?」とライトに言った。
  7. ライトが「俺たち全員がリーダーってこと。」とトカッチに言った。
  8. トカッチがしばらく笑ったあと「むちゃくちゃだ。」とライトに言った。
  9. ライトが「俺たちは……それでうまく行く。俺には見える。」とトカッチに言い、トカッチの方を向いて顔を見合わせた。

ライトが「トカッチ、さっきはほんとナイスサポート。助かった。」とトカッチに言った。ここには、「感謝の表明」とともに「賞賛」も含まれている。

トカッチが「ライトの顔を見てたら、あの先が列車の場所だってわかったから、集中してたんだ。」とライトに言った。ここには、「感謝」に対する「どういたしまして」は特になくて、「賞賛」に対する独特の応接がある。「ナイスサポート」などの「賞賛」に関して、たとえば「謙遜」をするという選択肢もありうるが、トカッチは特に謙遜などをしていない。賞賛された内容を特に否定したり謙遜したりすることなく、淡々と経緯の「報告」をしただけであった。そしてこの「報告」の内容は、今後も応用可能なので教訓としてチームで共有していくこともできる。

ライトが「さすが。」とトカッチを指差して言った。これはその「報告」された内容へのまたも「賞賛」である。「さすが」というからには、トカッチはふだんから「実績のある」人なのだろう。その点に関してはトカッチの応答のしかたに捉え方が表われている。

トカッチは「ぼくわかったよ。ぼくにはこういうサポートのほうが向いてる。リーダーなんてタイプじゃない。」と言った。この「サポートのほうが向いてる」と自負しているあたりの発言もあって、「たぶんふだんから実績があるのだろうな」と推測できる言い方になっているわけだ。別に「集団活動にリーダーは必要」という持論は撤回していない。その持論のまま、自分の役割はリーダーのサポートだと、「位置づけ直し」をした発話というわけだ。尤も、「リーダーにならなくてはならない」と思い込んでいたときのトカッチの行動だって、ライトのサポートとしてなら一定の成果を挙げたとも言える。それはリーダーにならなければという思い込みの成果でもある。ただ、そのライトのサポートをトカッチ自身は「リーダーにふさわしい行動」だと見なしていない、ということでもあるわけだ。ともあれ、トカッチのこの発話は、まあ前言撤回の要素を含んだ「提案」であると言って良いのではないかと思う。

それに対してライトは「だからさ、もういいよそうゆうの。陰のリーダーが居るなら、サポートが得意なリーダーも居て、そん時そん時で必要なやつがリーダーになればいいんじゃないの。」とトカッチに言った。こういう発言がトカッチにも、またおそらく他のメンバーにもすっと受け入れられていくだろうあたりが、やはりライトがリーダーにふさわしく見えてしまう要因であろう。「全員がリーダーでいいじゃん」と提案した者の提案がすっと容認されていくという、そういうリーダー性を結局ライトはもっているとしか言いようがない。ただライトは、当初は「リーダー不要論」であったが、ここでは「全員がリーダー論」に変化している。この変化は、おそらくトカッチが「リーダーにふさわしく行動しなければ」と思い込むことで、実力以上のものを発揮したことを目の当たりにしたことに因るものだ。「リーダーという観念」自体が人に影響することを感じ取ったということだ。いずれにせよ、「もういいよそうゆうの。」とトカッチの提案を却下しながらも、それをも包摂しうる考えをライトは「提案」した、というか「主張」したのである。

トカッチはこの「主張」に文字通りには賛成しない。しばらく笑ったあと「むちゃくちゃだ。」と言うからだ。だが、この会話のシークエンスの後の展開では、まんまとライトの提案に従った「全員がリーダー論」に宗旨変えしている。まあそれはもう少しあとのことだ。

最初ライトが提案したのは、文字通りの「全員リーダー論」というのとも違っていた。そうではなく、「そん時そん時で必要なやつがリーダーになればいい」「得意分野がリーダーによって違って良い」というものだった。トカッチが「必要なやつが?」と質問をしたのは、要するにトカッチがサポートだと思っていた「必要なこと」もまた、リーダーの仕事と扱われることになるからだ。リーダーの業務があり、他のメンバーの業務がある、というそういう話なのではなく、ライトが言いたいのは「必要なことをする」ことがそのまま「リーダーの行動」なのである。その主張を縮約した表現が「全員がリーダー」というものにほかならなかった。これは質問への答というよりは、そのような質問が起こってくるような事情を封じるべく、よりわかりやすい表現に改めた、といった行為だと言える。

トカッチが文字通りには賛成しなかったのがこの「わかりやすい表現」による主張であった。「むちゃくちゃだ。」というわけだ。だがこれがトカッチによる「却下」というふうにはならない。トカッチのほうに「根拠」や「代案」がないから、というのもあるが、「却下」になってしまう前に、先にライトがさらに話し続けたからである。

ライトは「俺たちは……それでうまく行く。俺には見える。」と言った。ここまで確信の表明をされてしまえば、よほど強い「根拠」か「代案」でもない限り、まず却下や否定は難しい。ともあれ、そのくらいに強めに、ライトはリーダーというもののあるべき形についてのビジョンを提示することに成功しそうな展開となった。逆説的にも「全員がリーダー」ということを主唱する者が説得力というか浸透力があって、この主張こそがまるでリーダーが唱えて皆が従う原理になるかのようなかっこうになっているのである。

ライト・トカッチのところにミオからの通信での連絡がある場面である。

  1. ミオが「ライト・トカッチ、早く来て。シュバルツに追いつかれる。」と通信で言った。
  2. ライトが「わかった。すぐ行く。」と通信でミオに言った。
  3. ライトが通信を切って、トカッチのほうを見て「ほら、世話焼きリーダーからだ」と言った。
  4. トカッチが思わず笑いだしたのち、「怒られるよ。」とライトに言った。
  5. ライトが、「内緒。」とトカッチに、人差し指を口の前に立てて「内緒」のポーズをして、言った。
  6. ライトが「行くぞ。」とトカッチに言った。

ミオが「ライト・トカッチ、早く来て。シュバルツに追いつかれる。」と通信で言った。これは「要請した」という発話行為であると定式化できよう。

ライトが「わかった。すぐ行く。」と通信でミオに言った。これは「応諾した」かつ「約束した」といったタイプの発話行為と記述して良い。

ライトが通信を切って、トカッチのほうを見て「ほら、世話焼きリーダーからだ」と言った。この言い方が単にからかっているように聞こえるのみならず、まるでこの真剣な要請までもが「単なる世話焼き」のように扱っているふうに聞こえる点が、筆者には少々気になる。実際にはおそらくこう説明できるだろう。視聴者には「世話焼きリーダー」という呼び方はここで初めて提示されるわけだが、「ほら」という言い方をしているので、この呼び方に近いものはすでにライトとトカッチの間では使われた履歴があるのだろうな、と推測がつく。日頃からこっそりとミオの行為を「世話焼き」というふうになら呼んでおり、それを使って今回の話題である「リーダー」という語と結合させて使ってみた、というふうに聞こえるのだ。というのも、通常の場合なら「ほら」のあとには「用件」が提示されそれを指すために使う「ほら」なわけだが(「ほら、シュバルツに追いつかれてピンチだってよ」など)、この場合「ほら」のあとに提示されるのは「送り手が誰か」だからだ。だとすれば、「ほら、あの世話焼きからだよ」というふうに既知の要素を指し示すように聞こえて当然である。真剣な要請までも世話焼き扱いしているように聞こえるのは、ここで「ほら」に後続して「用件」が提示されなかったことに対応している、そのように筆者は考える。

トカッチは笑いながらも「怒られるよ。」とライトに言った。その「世話焼きリーダー」が誰なのかは当然言及されない。される必要もない。のみならず、その人物がそれを聞いたら「怒るだろう」という予測が立つほどなのである。ともあれ、ここではトカッチは「その人物が世話焼きであること」は何一つ否定しない。むしろ積極的に認めたうえで「バレたら大変だよ」という扱いを表明した。これらをまとめれば、ライトの「からかい」に対して、それを承認し前提としたうえでの「注意喚起」をした、とでも言えようか。「バレないように気をつけてね」ということになるからだ。

ライトが、「内緒。」とトカッチに、人差し指を口の前に立てて「内緒」のポーズをして、言った。これは、トカッチの「注意喚起」やその前提にある「からかいの承認」をもあらためて、再承認したことになるだろう。トカッチの発話の前提となっていたものを、今一度明確に言語化してしまって、抜き差しならない共犯的な立場をつくってしまった、とも言える。要するにトカッチを「共犯者」にしてしまった、という行為だと言える。

とは言え事態は深刻かつ急務のようである。なのでライトが「行くぞ。」とトカッチに言った。リーダーとして振舞ったわけだが、発話行為として記述すれば「指令を出した」となるだろう。

シュバルツの列車に襲撃されてレインボーラインが危機的になっている場面である。ライト・トカッチとミオ・ヒカリ・カグラとは別の車両だが、互いに通信でなら連絡ができるようである。

  1. ライトが「どうすりゃいいんだ。」と言った。
  2. ヒカリが「パワーの違いを埋めないと無理だ。」と言った。
  3. ミオが「でも、どうやって?」とヒカリに言った。
  4. しばらくのちにトカッチが「ねえ、あのサポート列車ってタンクだよね。だったらエネルギーが入ってるんじゃないのかな。」と言った。
  5. ライトが「なるほど。」と言った。
  6. そのライトの目前にチケットが突然出現して言った。「その通りです。タンクレッシャーからパワーアップエネルギーを補給できますよ。」。言ったのち、即座に消えた。
  7. トカッチが「やっぱり。」と言った。
  8. ライトが「早く言ってよ。」と言った。
  9. 続けてライトが通信で、ヒカリに「よし、ヒカリ、エネルギー補給だ。」と言った。
  10. ヒカリが通信で「わかった。」とライトに言った。
  11. ヒカリが「どこだ。」と言った。
  12. ミオが「どれ?」と言った。
  13. カグラが「じゃこれ、ピッ」といって何かボタンを押したら、ミオが「えっ?」と言っているうちにも、エネルギー補給の機構が作動し始めた。
  14. ヒカリが通信で「補給準備良し。」とライトたちに言った。
  15. ライトとトカッチがともに「はっ」などと何か声を上げた。
  16. ライトが通信で「頼む。」とヒカリに言った。
  17. ヒカリが通信で「任せろ。」とライトに言った。

ライトが「どうすりゃいいんだ。」と言った。これは同じ車両に居るトカッチには聞こえる発話だが、他の車両に居る者に向けての発話ではおそらくない。どちらかと言えば、ひとりごとに近い。「困惑の表明」とでも言えるだろうか。これが次のヒカリの発話とつながって会話のように聞こえるのは、「演出」によるものであり、要するに同時多発的に皆同じことを考えている、という現象を描写したものだと見るのが良いだろう。

別の車両に居るヒカリが「パワーの違いを埋めないと無理だ。」と言った。違う車両に居ても同じことを皆考えているため、偶然、これがライトの発話への返答のような内容となった。いずれにせよ、ヒカリの発話は同乗しているミオとカグラに対しての、「状況認識の主張」くらいのものになっている。

その主張に対して、ミオが「でも、どうやって?」と言った。これは相手がどのくらい「回答」を事前に準備しているかによって、記述が変わってくる。ヒカリはおそらくこの時点で、明確な「回答」や「対策」はまだもっていない。なので、「でも、どうやって?」という質問は、単なる質問だと言ったほうが良いだろう。相手に回答できる準備がありそうならば、「促し」になるが、そこまで強いものではないと見て良い。また、そうであるとすれば、ミオの発話は単なる「質問」というだけでなく、「議題設定」の推進という面もあることになる。「回答」や「対策」を出すのは無理だとしても、「問題の捉え方」なら進展させられるからだ。そういう面をミオの発話はもっている。

しばらくのちにトカッチが「ねえ、あのサポート列車ってタンクだよね。だったらエネルギーが入ってるんじゃないのかな。」と言った。これは「提案」という行為として定式化できる。

ライトが「なるほど。」と言った。これはトカッチの「提案」を「是認」したくらいに記述できるだろう。「賛同」というほどではないしそこまでの知識があるわけでもないが、素人考えでも「一理ある」くらいではあるからだ。

そのライトの目前にチケットが突然出現して言った。「その通りです。タンクレッシャーからパワーアップエネルギーを補給できますよ。」。こちらは、ライトらと違い「専門家」による「賛同」というか「承認」であり、「説明」でもある。ただし、それ以上詳しいこと、たとえば具体的なやり方などを何も言わずに、即座に消滅した。このチケットの行為全体を眺めてみると、結局「誰かメンバーが気づいたらそのとき初めて教えてやろう」という態度のように見える。もし、誰も気づかなければそのままだったかもしれないわけだ。或いは、ヒントの提示程度だったかもしれないわけだ。おそらく、トッキュウジャーという戦隊のいろいろな武器や戦い方というのはすべてイマジネーションに依存しているため、メンバーの誰かが思いついたりしたものでないと、戦法として使い物にならない、ということなのかもしれない。だから、トカッチが思いついたときに初めて現れて「承認」するという形で教えたわけだ。それも全然詳しくない程度にだ。そういう見方が充分可能である。ともあれ、チケットの行なったことはトカッチへの「承認」ならびにトカッチたちへの「説明」であり、同時に「あとは任せた」とでもいった、「委託」でもある。

トカッチの「やっぱり。」という発話は、いちおうライトにも聞こえるように言われてはいるが、ほとんど独り言である。ライトはライトでこのとき、消滅したチケットに向かって「早く言ってよ。」と言っていたので、聞いていなかった。ライトのほうの発話は「要求」ないし「苦情」くらいのものであろう。ただし聞き手となるはずの相手はすでに消滅していた。

続けてライトが通信で、ヒカリに「よし、ヒカリ、エネルギー補給だ。」と言った。これは「指令」であるが、ヒカリが情報をどこまでもっているのかが不明な状態なのがやや気になる。結局、別の車両であっても通信以外にも、何らかの方法で会話などが聞こえるようになっているのかもしれない。そうであるかのようにして、ライトの「指令」はなされた。またヒカリのほうからの通信での「わかった。」という「応諾」も同様になされた。「どのエネルギー」を「どこ」から「どこ」へ補給するのかは自明であるかのようにして、このやり取りはなされたのだ。次の発話での「どこ」「どれ」はこの次元を問題にしているわけではないことに注意してほしい。

ヒカリが「どこだ。」と言った。次いでミオが「どれ?」と言った。これは、上記のような「どこ」を問題にしているわけではない。そのあたりは自明であるとしたうえでの、具体的な操縦方法として「どのボタンやスイッチを押すのか」を問題にしているのである。結局カグラが「じゃこれ、ピッ」といって何かボタンを押したのが「正解」だったようである。これによってエネルギー補給の機構が作動し始めた。実際にカグラがボタンを押してしまったため、ミオが「えっ?」などと「疑念の表明」などもなしていたりもする。ヒカリやミオの「どこだ」「どれ」といった発話は、「迷う、ということをする」という行為の一部として位置づけられるだろう。それに対してカグラの「じゃこれ、ピッ」というのは「試してみる、ということをする」という行為の一部として位置づけられるだろう。ともあれ、結果的にうまくいった、という展開が描写されていた。

ヒカリが通信で「補給準備良し。」とライトたちに通信で言った。これは「報告した」とでも定式化できるだろう。ライトとトカッチがともに「はっ」などと何か声を上げた。これは驚きの表明のようにも聞こえる。おそらく、その補給準備のために、自分たちのほうも何か列車の操縦レベルでしなければならないことが生じるのであろう。それに向けての「やらなきゃ」という感受が、驚いたときの声の出し方のように聞こえるのである。

ライトが通信で「頼む。」とヒカリに言い、ヒカリが通信で「任せろ。」とライトに言った。「指令」と「応諾」(ないし「約束」)とでも定式化できる。

列車間のエネルギー補給の機構がなかなかうまくつながらない場面である。

  1. ライトが「ヒカリ、まだか?」と言った。
  2. ヒカリは懸命に操作しているが、なかなか補給の経路がつながらない。
  3. カグラが「ヒカリ、早く!」とヒカリに言った。
  4. ミオが「ヒカリ」とヒカリに言った。
  5. トカッチが「ヒカリ」と言った。
  6. ライトが「まだか?」と言った。
  7. ヒカリが「ここだ!」と言った。すると、補給の経路がつながった。
  8. ライトが「やった」と言った。
  9. トカッチが落ち着いた声になって「補給開始」とヒカリに(?)言った。
  10. ヒカリが「OK」と言った。
  11. しばらくのちにヒカリが「補給完了」と言った。
  12. トカッチが「よし」と言った。

エネルギー補給の機構がつながらないで焦る焦り方にも、二通りある。ライトとトカッチの車両は、シュバルツの車両からの攻撃を直接受けているため、その攻撃が来たタイミングで焦ることになる。一方、ヒカリと同乗しているミオやカグラは目の前でヒカリがその機構を操縦していてなかなか接続がうまくいかないのを見ながらの焦りということになる。「まだか」に代表されるようなライトの発話はわりと単純に焦っていると言えると思うが、つまり、「促す」の面が強いと思うが、同乗しているカグラやミオが「ヒカリ」というときはどちらかというと「励ます」の要素を含んでいるようにも、思えなくもない。「ヒカリ」と呼ぶときの置かれている状況の違い方が、少しだけ表われていると言えなくもないのである。

いずれにせよ、「ベストのタイミング」を待っていたかのようにヒカリが「ここだ!」と言った。これによって、補給の機構がつながり、補給が可能になった。この「ここだ!」は独り言という扱いで良いだろう。

これによって最も助かったのは操縦しているライトなので、「やった」と言った。このとき正面ではなく、少し車内の側面に近い箇所を向いているので、そのあたりの場所に接続されたことの合図のようなものが表示されるのかもしれない。この「やった」も独り言という扱いで構わない。続けてトカッチも同じ方向を向いて「補給開始」と言って、何かの合図を出したときのような手の形をした。これはトカッチがヒカリに「指令」を出したように見えるし聞こえる。少なくともヒカリはその直後に「OK」と言ったからだ。

その後映像的に「エネルギーの補給」の映像が提示されたのち、ヒカリが「補給完了」と言い、トカッチが「よし」と言った。これは「報告」とその「承認」とでも記述できる。

戦闘機を爆破され、命からがら脱出してきたシュバルツをグリッタが迎えた場面である。

  1. グリッタが「シュバルツ様、お怪我は」と言いながら、駆け寄って倒れそうになるのを抱きとめた。
  2. シュバルツは「負けた将に情けは無用。」とグリッタに言った。
  3. グリッタは「シュバルツ様のせいではありません。クライナーがシュバルツ様の力を充分に発揮できなかったのです。」と言った。
  4. そのときシュバルツがグリッタの手を握りしめ、グリッタは小声で「はっ」と言った。
  5. シュバルツはすぐに、一度握ったグリッタの手を突き放すようにして、無言で去って行った。このときもグリッタは小声で声にならない声をあげていた。

グリッタが「シュバルツ様、お怪我は」と言いながら、駆け寄って倒れそうになるのを抱きとめた。これは「心配する」ことをし、かつ、「介抱」に近いことをしようとしたのでもある。まとめれば「いたわる」とでも言える行為だと言える。そもそもグリッタはそのように振舞うために、ずっとシュバルツの帰還をその場で待ち続けていたようなのである。

シュバルツは「負けた将に情けは無用。」と言い、その「いたわり」を言うなれば「却下」した。

グリッタはそれに対して「シュバルツ様のせいではありません。クライナーがシュバルツ様の力を充分に発揮できなかったのです。」と言った。これは「却下」というシュバルツの応接に対して、「却下する必要はありません」とでも答えたようなかっこうになっている。「弁護する」とか「かばう」とでも定式化できるかもしれないし、もう少し積極的に「励ます」とか定式化しても良いかもしれない。ともかく、具体的な内容の発話でもって、「弁護」なり「励まし」なりを行なっており、「負けた将」の箇所を否定することにもなっているわけだ。「あなたは負けた将なんかではない」というわけだ。

そのときシュバルツがグリッタの手を握りしめ、しかしすぐに一度握ったグリッタの手を突き放すようにして、無言で去って行った。ただし、突き放したときにもう一度グリッタの手にふれてたたくようにしてはいる。これは、シュバルツのグリッタへの応接としては積極的かつ肯定的なほうである。とはいえ、グリッタの発話に対する言語での応接は無かった。

ともあれ、このシュバルツの手を握ったりふれたりする無言のリアクションに対して、グリッタのほうも声をあげたり、声にならない呼吸音などを出しながら、何かの感情をたたえたような体勢でシュバルツを見つめていた。

戦闘がひととおり終わって、サポート列車もまたどこかに帰還していくという場面である。

  1. カグラが窓の外を見ながら「あんなサポート列車がまだまだどっかにあるんだね。」と言った。
  2. ヒカリが別の窓の外を見ながら「できればもっと簡単に見つかってほしいんだけどね。」と言った。

カグラの発話は、「今後の任務」ということを前提にしてなされている。「あんなサポート列車がまだまだどっかにあるんだね。」というときに、「つまりそれをひとつひとつ探し出さないといけないんだね」ということが、前提され、また帰結として想定されているのだ。だが、そのような帰結を積極的に打ち出す発話、たとえば「大変だなあ」と嘆いたりするような発話ではない。なので、「確認」くらいの発話ということで良いのではないかと思う。

その帰結のほうを想定して、応接したのはヒカリのほうであった。「できればもっと簡単に見つかってほしいんだけどね。」。こちらのほうは、「今回は大変だった」とか「これから大変だろうなあ」といった、そういう気分と連接したものになっている。「訴え」とか「要求」というには少し強すぎるし、その訴えや要求をする相手が居るわけでもないのだが、ともかくこれが本業ではなく副業的な位置づけであることには対応した発話だろう。本業はシャドーを倒すこと、サポート列車の探索は本来は副業、だがシュバルツが狙っている限りはサポート列車の探索も本業の一部になってしまう、だからよけいに大変だ、というくらいの意識はあると思う。今までは彼らは「向こうから現れた敵」を相手にしていれば良かった、だがこれから先は自分から率先して捜しに行く業務が増えた、そういう変化に対応した発話でもあろう。業務の性格が変化してより一層大変になってしまったことへのちょっとした「ぼやき」、これが、このヒカリの発話を定式化し記述するのに、まずまずふさわしいのではないかと、筆者は思う。

五人が同じ車内に居るときに、ライトとトカッチが小声で内緒話をしている場面である。

  1. トカッチが「で、ただ、ヒカリが陰のリーダーで、ぼくがサポートリーダーでしょ。」とライトに言った。
  2. トカッチが「で、ミオが、(笑)世話焼きリーダー。」と言い、ライトも一緒に笑い声(無声音)をあげた。
  3. トカッチが「って待って、じゃカグラとライトは。」と言った。
  4. ライトが「へ、カグラはなりきりリーダー。」と言った。トカッチが「はい」と言った。
  5. ライトが「でおれが弁当リーダーかな。」と言って弁当を取り出した。
  6. トカッチが笑いながら「へ、待って、そりゃないよ。給食当番みたいじゃん。」と言った。
  7. ライトが「ピッタリ、ピッタリ。でも合ってるだろ。特に世話焼きリーダーとか。」
  8. トカッチが「はは、納得納得」と言った。
  9. そのとき、ミオが突然その場に現れて「何?世話焼きリーダーって?」とライトたちに言った。
  10. ミオがそばの席に座って、笑顔で「おせっかいおばさんみたい。」と言った。
  11. 狼狽したライトは、ミオから目をそらした。トカッチは「ん、あ、おばさん、ってことはないんじゃない?ね」とライトに言った。
  12. ライトが「うん、ないないない。全然ない。」と否定の身振りで手を振りながら言った。
  13. しばらく考えていたミオが立ち上がって「あ、もしかして私のこと?」と二人に言った。
  14. ライトとトカッチが二人で同時に、「いやいやいやいやいや」などと言いながら手を振って否定の身振りをした。
  15. 怒ったミオが「ライト・トカッチ!」と言って、テーブルを叩いた。
  16. ライトとトカッチが慌ててその席から逃げ出し、追いかけるミオが「ちょっとどういうこと?何よ世話焼きリーダーって!」と二人に言った。
  17. ライトがミオの方向にトカッチを突き飛ばして逃げた。トカッチは「何?」とか言いながら反対方向を指差して、逃げた。ミオが「何もないじゃん、もう!」と言ってさらに二人を追いかけた。

先ほど一回敵を倒したあとの雑談の続きを、ライトとトカッチがやっている。トカッチが「で、ただ、ヒカリが陰のリーダーで、ぼくがサポートリーダーでしょ。」とライトに言った。これはすでに出ている話であり、「確認」の発話である。

トカッチが「で、ミオが、(笑)世話焼きリーダー。」と言い、ライトも一緒に笑い声(無声音)をあげた。これも一度出ている話であり「確認」とも言える発話だが、要はこの話(かそれに匹敵するくらいのからかい話)が二人はやりたいのである。

ここであらためてちょっと検討しておこう。「世話焼きリーダー」という言い方はなぜ、言われた当人を怒らせるのか、或いは怒らせるだろうと予測がつくのか、である。「世話焼き」という言い方は、「頼まれもしないことをやりたがる」という含みがまずある。少し強く言えば「ありがた迷惑」という面がある。それから「やりたがる」というその姿勢に対して「何もやりたがらなくたっていいのに」という軽い「呆れ」もないではない。そういったもろもろを、非難するためではなく、単純に少しからかおうというとき、少しだけ揶揄するときに、「世話焼き」という言い方をするように、筆者は思う。もう一つ、世話焼きという語が使われるケースでは「自分がやらなければ他にやる者がいないから、だからやるのだ」という自負心のようなものが見受けられるケースもある。また、「他人の世話ばかり焼いて、自分のことがお留守になっている」ケースもあるだろう。その自負心や、自省の無さもまた、揶揄やからかいやシャレの対象になるだろう。ただ場合によっては「本当にすごくありがた迷惑」や「たんに迷惑」な場合にも使う可能性があり、いつもシャレや軽いからかいで済むとは限らないようにも感じる。

と同時に、世話を焼くという言い方がまったくニュートラルかむしろほめ言葉として使われる場合だって、けっこうあるだろう。ただそこで「世話焼き」という名詞形にしてしまうとからかいめいて聞こえるが、単なる「世話を焼く」だとそこまでは聞こえない、とそういうことなのだ。要は「世話焼き」という名詞形にどうやら、からかいに聞こえるポイントがあるようである。そのポイントというのは、おそらく当人はそこまで思っていないのだが第三者からみるととてもそう思える、というギャップにあり、そのギャップが名詞形だと特に際立つということかもしれない。名詞形で使う場合、第三者視点だからだ。

では、なぜライトやトカッチは、このからかいをことのほか好むのか、楽しむのか、も少し考えておこう。ミオはこれまでの物語を見るかぎり、どちらかと言えばかなりデキる女性であり、有能であると言って言い過ぎではない。場面に応じてリーダーらしい行動がとれ、きちんとしたものの考えができることも、随所で証明されている(と筆者は思う)。おそらく、だからなのだ。リーダーであるという自意識は特にもっていないようだが、「昔学級委員だった」ことの意識は抜きがたくあり、行動にも出ている。その点がたぶん第三者からみて、ちょっとからかってみたくなる点なのだ。実際に全然ダメダメな者をからかってもシャレにならないだけだが、ミオの場合実際にはかなり有能なのでシャレやからかいというレベルで済む。そのことの安心感というものもあっての、ミオをからかうことを好むライトとトカッチということではないかと思う。まあ、これは何から何まで推測しかないが、いちおうやっておくと、彼らの行為の記述の一助くらいにはなると思って書いてみた。

さて次にトカッチは「って待って、じゃカグラとライトは。」とライトに言った。これは、「あらかじめライトが持っている腹案」を尋ねるという行為であると思う。ライトがどういう呼び方をするかが知りたいのだ。なので、「質問」ないしは「回答の促し」といったあたりの定式化で良いと思う。自分のほうから面白い呼び方を考案してやろう、というつもりは特に無いようなのだ。

ライトが「へ、カグラはなりきりリーダー。」と言った。これは「提案」という発話行為である。これに対してトカッチが「はい」と言った。ただし「はい」というのは返事というよりは、呼吸音がそう聞こえるように呼吸したというのに近い。ともあれ、この「なりきりリーダー」という回答は、別段のコメントをトカッチはしなかったし、ライトも特別な態度で提示したりはしなかった。今まで出た中でもいちばん凡庸で意外性の無い呼び方だからだろう。

ライトが「でおれが弁当リーダーかな。」と言って弁当を取り出した。これも「提案」であるし、やはり凡庸で意外性がない点も同じである。のみならず、カテゴリーミステイクを起こしているような気がしないでもない。たとえば「食いしん坊リーダー」などと呼ばないと、カテゴリーがこれだけ異なるだろう。そのためかどうか、トカッチは「へ、待って、そりゃないよ。給食当番みたいじゃん。」と言って「却下」または「異議申し立て」を行なった。

だが、ライトはおそらくその「弁当リーダー」に近い役割をやりたいのだろう。「ピッタリ、ピッタリ。」といって、トカッチの異議申し立てに対して、非同意の発話をした。ただ、この点に関しては自分の提案にそれほどこだわっているわけでもないようだ。というのも、「でも合ってるだろ。特に世話焼きリーダーとか。」と発話を後続させたからだ。この「でも」は、「ピッタリとは言えないかも知れないけど」というくらいに受け止めて良いと思う。要は、自分が「弁当リーダー」と呼ばれるかどうかは比較的どうでも良く、その次の「世話焼きリーダー」という呼称こそが言いたいことなのである。それにこれだとトカッチと意見が一致しているからでもあろう。この「特に世話焼きリーダーとか。」の発話をするときに、ライトは独特のおどけたしぐさや表情をする。なんだかこの呼び方を見つけたことがうれしくてたまらない様子なのである。いずれにせよ、「でも合ってるだろ。」とあらためて、トカッチの異議に対して非同意を示しておいて、「特に世話焼きリーダーとか。」というふうに、相手との合意がとれそうな「根拠」を提示している、と記述することができるだろう。と同時に、「相手に内緒でからかう」という揶揄を楽しんでいる、というふうにも無論記述できる。

次にトカッチが「はは、納得納得」と言ったのも、同様に「揶揄」でもあるし、同時に、相手が合意がとれそうな根拠を出してきたのに合わせるようにして、「同意」をするという行為でもあるとも記述できる。

そのとき、ミオが突然その場に現れて「何?世話焼きリーダーって?」とライトたちに言った。これは、「楽しそうに二人が話しているので、話の輪に入ろうとした」という行為だと定式化するのが、まずは妥当だろう。直後に、そばの席に座ったこともその一環である。同時に、その「話の輪に入る」ためにいちばん気になった箇所を「質問」するという行為でもある。ライトは気まずそうに、目をそらして窓のほうを向いた。

続けて座ったのとほぼ同時にミオは「おせっかいおばさんみたい。」と言った。「おせっかいおばさん」という語彙がどの程度「一般的な語彙」なのか筆者はわからないのだが、一定のイメージを喚起しやすく、またある程度耳になじんでいる言い方だとは思う。なので、ミオにとってもこれは「ふつうに流通する語彙」として提示した言い方なのだろう。ともかくここでミオは「理解の候補を挙げる」とでもいった発話を行なった。

トカッチもライトもこういう場合にうまくごまかすのはとことん下手のようである。トカッチは「ん、あ、おばさん、ってことはないんじゃない?ね」とライトに言った。妙齢の女性を「おばさん」と呼ぶことじゃ多くの場合失礼に当たるから、まずそれを「理解の候補」から外しておこうとしたのだろう。またついでに言えば、「おせっかい」のほうもかなり否定的な使われ方をされやすいはずの語である。ほめ言葉である場合はかなり少ないだろう。しかし、本当に中年くらいの女性に対して使う分には、或る程度あっけらかんと使うことも可能な言い方ではある。その辺は状況次第ではあろう。ともかく、ミオには使うことはできない、とトカッチは判断したうえでの、候補外しであった。そして、ライトに同意を求めることで、それをより確かなものにしようとした。

ライトが「うん、ないないない。全然ない。」と否定の身振りで手を振りながら言った。ということは世話焼きリーダーというのは、おばさん以外の何者か、しかもおばさんと呼んでは通常いけない相手を指すことを帰結してしまう。のだが、ライトもこういうときにごまかすのはとても下手なようで、「おせっかいおばさん」から離れるだけで精一杯なのであった。

しばらく考えていたミオが立ち上がって「あ、もしかして私のこと?」と二人に言った。これもまた、「理解の候補を挙げ直す」とでも言える発話行為であろう。そして、ミオには実際には自分が「世話焼き」と呼ばれることに多少の身に覚えがあったりもするのだろう。思い当たる節があったに違いない。そのことと、目の前のライトやトカッチの不自然な態度から、このような新たな理解の候補が浮かんできたということになろう。

ライトとトカッチが二人で同時に、「いやいやいやいやいや」などと言いながら手を振って否定の身振りをした。これで、ミオの挙げた理解の候補が正しいと返事をしたのも同然となってしまった。二人がそろって同じように不自然な行動をとれば、そのようなふうに相手に受け取らせてしまう。そうやってごまかそうとする二人の態度も、そのときのミオに影響したに違いない。いっそう心証を悪くすることになるわけだ。それまで二人で楽しそうに話していたのも、自分に対する揶揄だったのに違いない、と思い当たってしまう。

怒ったミオが「ライト・トカッチ!」と言って、テーブルを叩いた。これは「非難した」でも「怒った」でも良いと思う。

ライトとトカッチが慌ててその席から逃げ出し、追いかけるミオが「ちょっとどういうこと?何よ世話焼きリーダーって!」と二人に言った。この辺になってくると、ただ単に怒ったというだけでなく、「徹底的に追及しよう」くらいの行為のように見なすことができるだろう。自分のどの行為を指して「世話焼き」と呼んでいたのか、ふだんからずっとそう思っていたのか、など逐一明らかにしよう、というわけだ。また「リーダー」という語がそこに結合されているということは、言わば「世話焼きの女王」とでも言われたような印象も受けるだろうから、その点も追及しておく必要があろう。「なぜリーダー」なのか、だ。そして、それをこそこそと自分に隠すようにして話していた件も追及する必要がある。おそらくそういった各種の「追及」の意図をまとめてここに見て取ることができるだろう。

ライトがミオの方向にトカッチを突き飛ばして逃げた。言い出したのはライトのほうだからよけい疚しいのだろうが、まあ卑怯ではある。

トカッチは「何?」とか言いながら反対方向を指差して、逃げた。これは「あ、あそこに有名人の誰々が居る」などと見え透いた嘘をついて逃げるときのと、同じような手口のように見える。ミオが「何もないじゃん、もう!」と言ってさらに二人を追いかけた。トカッチの発話は、「認識の主張」のふりであり、ミオの「何もないじゃん、もう!」という発話は、その「否定」ないし「却下」であろう。ともかく、ライトもトカッチも大した覚悟もなく(なくて良いが)、少し相手をからかいすぎた。相手のほうに少しばかりの身に覚えがたぶんあって、よけいに怒らせてしまった、という展開だったわけだ。

第06話の主な会話の箇所の記述・描写は、可能な箇所はまだ有ったと思うが、それでも主要なものはだいたい行なったと思うので、ここで終わらせたい。