コメント:加藤・海老原・石田『ジェンダー (図解雑学)』

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加藤・海老原・石田『ジェンダー (図解雑学)』(ナツメ社)

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  • ジェンダー学は、純粋に学問的なものというよりは、社会運動に近い。その中でも学術的な研究を産み出している部門のものを中心に集めた感じの書籍である。情報量がかなり多く、「主張」も多い。この本の読み方としては「事実」がどれなのか見極めて、それを「主張」や「著者の見方」などと仕分けていくというものになろう。事実を述べているのか著者の見方を述べているのか微妙な箇所というのは在るからだ。また、「事実」の中には「世の中にこのようなことを述べている者がいる」というタイプの「事実」も多い。それらへも著者たちは評価を下しているので、その仕分けはさらに錯綜することも在りうる。また仕分けの対象はイラストにまで及ぶ。著者たちが共感しているのか反感をもっているのかは、絵柄だけでわかる箇所も少なくないイラストだ。
  • ジェンダー学の提供する情報・事実・知見の多くは、世の中でさほど知られているわけではないだろう。たいていの人はこの種の事実から遠ざけられている。その点で知らないよりは知ったほうが良い。また、切実にこの種の事実を求めている人も潜在的に存在していそうである。このテーマは、誰もが何らかの関心はもちうるのだが、その中でも特に切実度の高い人のいるテーマだ。そういうマイノリティや特殊事例に関しての入門にもなりうる。そういう人ならジェンダーという語くらいは知っていることも多いだろうし、この本を手に取ることも多くなるだろう。この本の最大の価値は、そういった切実な読者への入門書であることに、まずは在る。
  • ジェンダー学が弱いなと私が個人的に思うのは、「ごくふつうの男性」のもつ各種の「常識」に疑いをもつような側面だ。それこそ、テレビに出演する男性と女性とでは、その外見において、決して対等とは言えないだろう。つまり「女性のほうが美しい」というふうに偏っているのである。そこから何を帰結させるかはまた別問題だろう。「男性は美しくなくて良い」ということかもしれないし、「男子は容姿にこだわってはいけない」ということかもしれない。こういったあたりの、「ごくふつうの男性」の読者といったものをメインターゲットにした、「ジェンダー学」の書籍もまた在ると良いのかもしれない。その点で産経新聞社をバックラッシュ勢力の代表の一つとして名指しで挙げた点は、私は評価する。それは同社・関連会社の他の番組や出版物にも注意を向けさせるからだ。私自身もその点にも少しからむ程度に、「テレビ朝日系局主題歌の男女平等(前半)」「テレビ朝日系局主題歌の男女平等(後半)」を書いている。画像が無いのは勘弁してください。
  • ジェンダー学の知見の多くは、多くの人が子どものときから疑問に思っていることではあまりなく、社会人などになって初めて感じるような疑問のほうにむしろ対応していることが多い。その意味で「おとなになるための学」であるという面をもつ。おとなになってからだと少し遅いので、大学生のうちに一通り知って考えておきましょう、というタイプの学問である。そして共感するならば、社会運動として身を投じることもできる。なので、全体として学問というよりは運動というふうに見える、そういうことだと思う。
  • なお、2020年は世界の急激な変化と連動しているかどうかは不明だが、日本は若い女性の自殺が目立って増加しており、その件は、この著作ではむろん扱っていない。今後の考究・対処すべき問題だろう。