コメント:矢部宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』
矢部宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』(講談社)
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クイズ番組などでペリーは「偉人」と形容されることが多い。ペリーが「偉人」であるうちは、矢部のこの書の内容が日本国内で「誰もが知っている説」になることはあるまい。タイトルにも在るように、束の間の心の平穏を求めるのなら「知ってはいけない」内容である。この内容が「何千万人」という単位で日本人に知られれば、ペリーは偉人扱いされなくなるだろう。
「密約」という語がキーワードである。この書の最初のほうで「密約」=「非公開議事録」と説明されているので、それを参考にすると良いと思う。ともあれ、日本の政治・軍事に関連することには無数の密約というものが存在していて、ということは非公開の会合が多数行なわれていて、実はそれこそが日本を動かしている。と、そういう主旨の書である。だから表向けの憲法や法律や条約だけを見ていても、本当のことはわからないし、それを使って世の中を動かすこともできないとのことだ。そして、高校生はどう思うかわからないが、私はこの十年近くの日本政治を眺める限り、「そうだろう、当然そうだろう」と賛同する勢いである。その程度には日本の政治は「まるで誰かのシナリオ通りに進行していた」ように見えてしまう。ただし、密約というものが必要とされてしまうのは、表向きの憲法、法律、条約といったものが在るからでもある。それらの裏をかくような仕方で「密約」はなされるのだ。単なる無法社会という話とは全然違う。
この書や類書を読むとすぐにわかることだが、SNS上で発信している有名な議員や元官僚などでも、矢部と共闘できそうに見える者であっても、この矢部の書の立場を「取り入れ」ている者はほとんど見当たらない。おそらく多くの議員は「政党」の党是に従わなくてはならない度合いが強いのだろう。そして、矢部の本の内容は、特に「憲法」に関しては賛同しない者が多そうな見解である。そのせいもあって、矢部のこの書がただちに政治に結実することは全く期待できない。というか、2015年以降頃の多くの議員や元官僚或いは言論人は、矢部の著書の内容に触れないようにしているように見えた。同意もしないし反論もしない。
そう言えば思い出した。誰もこの著書等の矢部宏治の著作と、「小学校英語の義務化」とを関連づけて話題にしている人がいない。なんでだろう?どう見たって同根の話だろう。