コメント:仲島ひとみ『大人のための学習マンガ それゆけ! 論理さん』
仲島ひとみ『大人のための学習マンガ それゆけ! 論理さん』(筑摩書房)
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この本の著者は国語教員だし、監修者の専門も論理学の哲学ではあっても論理学そのものではない。だが、これはとても良い本だと感じた。私がこの本を良いと思うのは或る意味では当然であり、私が類書に感じたような不審にちゃんと対応できている本なのである。「ハナはモテる。」というのを命題扱いすると、あとの処理で大変になるのではないか、と思ったりしたが、論理学的な展開の中での不具合は生じなさそうだ。「ハナはモテる。」は命題で良い、と論理学の哲学の専門家が認めた、というのは大きい。大いに勉強になる。
今までの二十年ほどばかり「論理的」とか「ロジカル」ということを教育目標として唱えたり、何か教材などを作ったりした人の多くは、現代論理学を大して知らない人たちだった。日本に論理学の専門家を養成するコースが少なく、有名な論理学者もほとんどいないのだからしようがない面も在る。ともあれ、そういう人たちやその成果物をこの書が駆逐してくれることを願いたい。そのうえでなお、この本も踏まえたうえでの「あえて現代論理学なんか無視する」という「ロジカル」をいくら普及させようとしても、それは構わないと思う。ただその種の人が「公教育」に入ってくることだけは勘弁してほしい。なんか、そういうことが今後起こりそうな気がするので、それへの否は突き付けておきたい。