コメント:川崎哲『新版 核兵器を禁止する――条約が世界を変える』

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川崎哲『新版 核兵器を禁止する――条約が世界を変える』(岩波書店)

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  • ページ数は少ないがすらすらとは読めないと思う。核兵器禁止条約と核不拡散条約(NPT)との違いをよく知ることが多くの人に重要だ。それが推薦しても良いと感じる理由である。また、政治的な立場を分類するときに、「核兵器禁止条約」に対する態度というものを考慮することの重要性を忘れないために有用な本だ。主な国がそれぞれの条約を承認しているか否かを押さえておくのも悪くないと思う。そこまでいかなくても、核兵器を現に今保有している国くらいは知っておきたいところだ。
  • 高校生に限らず、この本を読むのが多少困難であると感じる人もいると思う。その理由の一つには、カテゴリーの連関や分類がなじみがうすいこともある。たとえば条約と議定書とはどういう関係にあるのか知らないと、読んでいても茫漠とした印象にとどまるかもしれない。調べてみたら議定書というのは条約の一種くらいに捉えておくと良いようだ。登場する国際機関のなかでも、公式性の高い国連などと民間の団体やNGOなどとが、等価に登場し紹介されるのも、読んでいて茫漠とした読後感を生みやすい。とりわけ、いろんな団体が関与しているのだということ自体も著者の言いたいことの一つなので、よけいそうなる。ひんぱんに登場する国際会議なども、会議というイベントを指すのか、会議と名のついた団体を指すのか、などもわからないので、この辺も茫漠とした印象を与えやすい。要するに、この書は本来は一定の専門性を備えた読者向けの本なのである。ただ日本語その他が難しいわけではない。大学入試の英文が読める人なら読める日本語である。
  • 私の主観かもしれないが、首都圏の大型書店では、ICANがノーベル平和賞を受賞したときにフェアやコーナーなどの特集などを組んだりしていない場合しか見たことがなかった。おそらく書店に「圧力」がかかっていたのだろう。そういう「圧力」がかかりかねないことも、この書のなかでも(国家間での圧力ではあるが)ふれられている。