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2019年以降公開していた「東京23区の格差を縮小していた東大入試」のコンテンツを、2025年8月に撤回することを決めた。その理由は、私が所有しているデータからでは「東大入試は東京23区の格差を縮小していた」という命題を主張できないことが判明した事に在る。この命題は、1988年~1993年の東大合格者に関して主張されたものである。それで、「その主張ができない」というのはこうだ。1982年~1987年の「四谷大塚進学教室の合格者名簿」に掲載されていた「難関中学校」の合格者氏名と、1988年~1993年の「東大」の合格者氏名との一致度が高くない、…これである。この点を「西暦X年」に高校を卒業する年次の学年で検証することによって、私は判断を下した。「難関中学校」の合格者氏名は「居住地」を検証するために用いている。だが、「難関中学校」に合格したメンバーが6~8年後に東大に合格していなければ、その居住地データを用いて東大合格者の居住地を推定することはできない。したがって、東大合格者の居住地に関して包括的な主張を述べることはできない。そういうことだ。
なお、今回の検証には実際には東大だけでなく京大も用いた。その理由は、私の体感的な認識では、京大合格者は東大合格者と互角の学力(そして世間の待遇も互角)であると言って良いと思えたからだ。つまり京大合格者というものを「東大合格が可能な学力の者」と見なした上で加算したということだ。東大合格可能な者のうち実際には誰が京大のほうに合格・進学するかは偶然に左右されるので、この判断はおかしくないと私は感じている。
また今回、1学年のみの検証で私は判断を下したわけだが、その理由はこうだ。この検証はいくぶん以上手間がかかる。当初調査対象とした6学年を全部検証することには、相当の手間暇が費やされる。現実的にはそれが不可能に近いし意義が低いと思ったので、1学年のみの追加調査で撤回を決めた。それで充分であると思う。
前回対象校としたのは、以下の表で文字に強調を付加した高校であった。調査対象は男子のみだが、しかしこの表での合格者数は共学の場合は男子・女子の合計になっている。
高校名 | 合格者合計数 |
---|---|
開成 | 1047 |
学芸大附属 | 623 |
麻布 | 578 |
桐蔭学園 | 508 |
筑波大附属駒場 | 464 |
武蔵(私立) | 407 |
栄光学園 | 399 |
県立千葉 | 355 |
県立浦和 | 327 |
筑波大附属 | 309 |
駒場東邦 | 290 |
桜蔭学園 | 288 |
桐朋 | 282 |
巣鴨 | 274 |
海城 | 203 |
県立湘南 | 191 |
聖光学院 | 187 |
都立戸山 | 169 |
都立西 | 146 |
県立土浦第一 | 135 |
県立東葛飾 | 120 |
お茶の水女子大附 | 118 |
県立水戸第一 | 100 |
女子学院 | 98 |
県立厚木 | 98 |
都立国立 | 95 |
浅野 | 92 |
県立宇都宮 | 92 |
県立川越 | 85 |
フェリス女学院 | 82 |
都立八王子東 | 81 |
県立船橋 | 77 |
ここで抽出された「男子中学受験枠の在る(その過半は男子枠のみ)上位校」は、開成・学芸大附属・麻布・桐蔭学園・筑波大附属駒場・私立武蔵・栄光学園・筑波大附属・駒場東邦・桐朋・巣鴨・海城・聖光学院、そしてだいぶ差がついて浅野、となる。ただし浅野のデータは、四谷大塚から栄光学園の合格者数が定員の2~3割程度しかなく、その不足分の補充のために前回は神奈川県からの浅野合格者に制限して用いただけであった。そのため今回の追加調査では対象としなかった。
「難関中学校」の合格者氏名と、1988年~1993年の「東大」の合格者氏名との一致度が高くないという事を、西暦X年高校卒業の層に関して確認した。「難関中学校」の合格者氏名として判明している層というのは、小学校卒業時の居住地がわかるメンバーということだ。それらのうち、西暦x年、西暦x+1年、西暦x+2年の東大・京大合格者でもあるメンバーの数を計算した。つまり、現役合格、1浪合格、2浪合格までの合格メンバーの氏名と照合し計算した。出身高校ごとに、「難関中学に合格した者のうち東大・京大にも合格した者」の氏名・その人数を算出し、比率を計算したのである。
中学受験を経て入学したメンバーだけでなく、小学校受験と高校受験からでの入学者も多い高校は、「難関中学に合格した者のうち東大・京大にも合格した者」の実数も比率も低かった。高校ごとに、「四谷大塚経由で中学合格し東大・京大にも合格した」数÷「西暦x年・西暦x+1年・西暦x+2年の東大・京大合格者数の3年分の平均値」という比率を算出した。そのうち、学芸大附属高校・桐蔭学園高校・筑波大附属高校・桐朋高校はいずれもその比率が低かった。要するに、「四谷大塚経由で中学入学した者のうち東大・京大にも合格した者」の比率が低すぎて、これらの高校からの東大合格者の居住地の傾向はほとんど把握できないのだ。のみならず、附属高校に附属中学から全員が進学できるとも限らない。学芸大附は2/3程度、筑波大附は4/5程度が、検索してみると中学から高校に進学できるらしいとの情報が在った。
中学受験での募集のみである聖光学院も、「東大・京大にも合格した」数÷「西暦x年・西暦x+1年・西暦x+2年の東大・京大合格者数の3年分の平均値」という比率が低かった。と言うか、「四谷大塚経由で中学に合格した者のうち東大・京大にも合格した者」の実数が非常に少なかった。ゼロではないという程度しか居なかった。聖光学院に四谷大塚から合格した者の、東大・京大合格者数がなぜか非常に少なかったのだ。なぜこうなるのかは私には全く推定ができない。ともかく、聖光学院から東大・京大合格した者の居住地に関する情報は全く得ることができなかった。
また、栄光学園は、四谷大塚経由で合格した者が定員の2~3割程度しかおらず、「四谷大塚経由で中学に合格した者のうち東大・京大にも合格した者」という比率を算出するためにはデータが全く不足であった。
一方、「四谷大塚経由で中学合格し東大・京大にも合格した」数÷「西暦x年・西暦x+1年・西暦x+2年の東大・京大合格者数の3年分の平均値」の比率が充分高かった高校も在る。該当する麻布高校と駒場東邦高校は中学受験のみの募集である。そして、先の比率が麻布高校は42.7%、駒場東邦高校は49.8%であった。これらの高校からの合格者に関しては居住地の傾向を調べることに一定の価値が在るかも知れない。さらに、高校受験での募集も在ったにもかかわらず、先の比率が筑駒高校は44.2%、私立武蔵高校は43.144.3%であり、この2校も居住地の傾向を調べることにやはり価値が在るかも知れない。
また「四谷大塚経由で中学合格し東大・京大にも合格した」数÷「西暦x年・西暦x+1年・西暦x+2年の東大・京大合格者数の3年分の平均値」の比率が低かった高校には、巣鴨高校と海城高校が在り、「四谷大塚経由で中学合格し東大・京大にも合格した」人数の割合は、目安として言えば後述する開成高校の半分程度であった(巣鴨:14.0%、海城:15.8%)。これらの高校は、東大・京大合格者は高校受験での入学者が多い、という推測が成り立つ。
さて問題は開成高校である。開成高校の場合も東大合格者のうちの高校受験層の比率が高いという疑いが在ることが問題なのである。「四谷大塚経由で中学合格し東大・京大にも合格した」数÷「西暦x年・西暦x+1年・西暦x+2年の東大・京大合格者数の3年分の平均値」は開成高校は29.6%であり、決して多くはない。というのも中学受験入学者は卒業生の75%程度であり、他方で高校受験で開成高校に入学する者は卒業生の25%程度であるにもかかわらずだからである。そして全体の人数が多いため、比率もさることながら、実数としての影響も大きい。開成高校がもし中学入学者の東大・京大合格者比率が低いとすると、中学受験ビジネスが崩壊しかねないだろう。そのために中学入学者の比率が低いことが伏せられているのかも知れないほどだ。ともあれ、この件に関して追加調査が必要であると私は感じた。
そこで開成高校に関しては、西暦X年と西暦X+1年の東大・京大合格者数について、次の事柄を調査した。西暦X年に関しては「四谷大塚経由で中学合格し東大・京大にも合格した」数のうち、西暦X年卒業生と西暦X-1年卒業生の合計である。また西暦X+1年に関しては「四谷大塚経由で中学合格し東大・京大にも合格した」数のうち、西暦X年卒業生と西暦X+1年卒業生の合計である。つまり、2ヶ年の合格者のうち、中学受験組の現役合格と1浪合格の合計人数を、その年次の開成高校からの全合格者数で割った数値を算出したわけだ。すると、西暦X年は30.6%、西暦X+1年は32.2%となった。その結果は次のように考える事が可能であろう。
高校受験枠が全く無い中学受験枠のみの麻布高校と駒場東邦高校は、東大・京大合格者のうち四谷大塚経由の者が占める割合が4割以上なのであった。そして高校受験枠が在る筑駒高校と私立武蔵高校も同様に4割以上なのであった。これらと比べると、開成高校の3割という割合はいくぶん低いと見なすことが適正である。開成からの東大合格者が高校受験組が中心となっている可能性は在るのだ。
ただし、この状況がかりに知られても、中学受験ビジネスが開成中学に関して崩壊はしないだろう。と言うのも、上位層に関しては開成中学合格者のなかから難関医学部に進学する層というものが、まとまって存在するからである。難関医学部というのは、目安として言えば、東大理2よりは難しいという位置づけに在るだろう。なので学力的に開成の中学入学組が不足であるということには、おそらくならない。高学歴志向の保護者が自分の子供の開成中学合格を目指す、そのための進学塾といったビジネスも成立するのである。
さて話を戻す。東大に多数合格する高校のうち、小学校受験組や高校受験組が存在する学芸大附属高校・筑波大附属高校・桐蔭学園高校・桐朋高校は、中学受験組が東大合格者のうち占める割合は全く低い。また原因は不明だが、中学受験組のみである聖光学院も四谷大塚経由の者が全く見あたらないほどである。そして、巣鴨高校と海城高校もおそらく高校受験組が東大合格の中心であるのだろうが、他方で四谷大塚経由の中学受験者は少ない。このくらいに中学受験組の占める割合が低い高校の影響が在ると、中学受験組が東大・京大合格者の主要な一部であるとは全く思えなくなる。なので、私の所有するデータから東大合格者の居住地を推定することは不可能になる。そういうわけだ。以上。
追記。今回撤回した見解は、次のリンク先を参照することでかつて形成したものであった。このリンクの情報は残しておく。『学内広報No.1227』と『学内広報No.1277』の巻末の「資料」のページに在る東大男子自宅生の居住地結果を前回参照した。