烈車戦隊トッキュウジャー第01話 間接話法作文の一例03

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注釈

以下はテレビ朝日系列局放映の『烈車戦隊トッキュウジャー』第01話映像を「マンガ作文」やその他の「教材」として使用する教育関係者を想定した内容である。「悪役の言語行為を説明する作文課題は特に難しいはずだ」という考えのもとで書かれている文章だ。「マンガ作文」という教育手法は、通常は採らないべきでものである。だがこのコンテンツはまだ残しておく。というのも、放映内容自体を理解するうえで役立つ内容も含んではいるからである。

本文

戦隊ものでは悪人どうしの会話は概して難解な傾向にある。また、トッキュウジャーの場合は加えて、車掌の解説調の発言もわりと難しい。要するにこれらは語彙が幼児には難しいというのがまずあり、それに加えて悪人どうしの場合、間接的発話行為と呼ばれうるタイプのものが多いからという事情もある。また物語に固有の造語やジャーゴンも多い。なので、一般的な単語なのかそれともこの物語でだけ通用する造語・ジャーゴンなのか、幼児にその識別が難しい。さらに、「一般的な単語」が「この物語に特有の設定に即して」使われている、つまり一般的でないしかたで一般的な単語が使われている、という場合すら決して少なくない。ただし、音声を聞く場合だと、音声から話者の感情が聞き取れる場合が少なくないので、「人の感情」に特に鈍感でない子供なら、言葉はあまり理解できなくとも、話の流れはある程度感じ取ることが可能ではある。

もちろんそれと反対のほうを強調して、「人の感情」に特に鈍感でない子供なら話の流れはある程度感じ取ることが可能であるが、しかし、言葉そのものはあまり理解していないし言語行為・発語内行為としても理解していない、というふうに指摘することもできるのではある。

「バックシャドー。新しいステーションの完成はまだですの」とノア夫人はバックシャドーに言った。

新しいステーションの完成が遅いとノア夫人はバックシャドーを責め、その時期がいつになるかと詰問した。

「はっ。既に『ガキ捨て山駅』と名づけ、後は子供たちを運ぶだけ。子供らの泣き声が良い闇となることでしょう」とバックシャドーはノア夫人に言った。

バックシャドーはノア夫人に対してかしこまった。そして、ステーションの名称についてのプランと必要な段取りは残り僅かであることをノア夫人に答弁し、またそのプランのメリットを強調した。

「お母さまぁ、グリッタは退屈ですぅ、お外に出たいー」とグリッタはノア夫人に言った。

自分が退屈なので早く屋外に出たい、とグリッタは母であるノア夫人に甘えた態度と足をバタつかせる落ち着かないとでも言うような挙動とで、せがんだ。

「おお、グリッタ。もう少しですから我慢なさい。お母様が良い闇に溢れたステーションをつくってあげますからね」とノア夫人はグリッタに言った。

ノア夫人はグリッタの甘えた態度を甘受し、今しばらく待てば良い闇に溢れたステーションができると言い聞かせた。

「ノア夫人。まだ遊びのステーションをつくるのは早いですぞ。今必要なのはシャドーラインの路線を拡げる事。闇の皇帝をお迎えするために」とネロ男爵はノア夫人に言った。

ネロ男爵はノア夫人が優先順位の低いプランに入れ込んでいることについて、命令するような口調で諫めた。そして闇の皇帝のためになる優先順位の高いプランは路線の拡張である、とノア夫人に対して厳かに主張した。

「ネロ男爵。グリッタはいずれは皇帝のお妃となる子ですのよ。美しさを保つのも皇帝のためです」とノア夫人はネロ男爵に言った。

ノア夫人はネロ男爵に対して一歩も引くことなく負けじと厳かな口調で名前を呼び返した。そして、グリッタの美しさを保つことが皇帝のためになること、したがってステーションをつくるプランの優先順位が決して低くないことを、ノア夫人はネロ男爵に対して力強く主張し返した。

後続する「シュバルツ様」「トッキュウジャーか」はそれぞれグリッタとシュバルツの独白であり、会話行為ではないことが見ればわかるので、特筆すべきは無い。