秋嶋亮『日本が世界地図から消える前に』:忙しい社会人や学校に通う若いかたが現代日本(2023年くらいまで)の状況認識を共有するための書

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秋嶋亮『日本が世界地図から消える前に 最悪の時代を生き抜くための社会学』(出版社サイトその1)(出版社サイトその2)(amazon)(ブクログ)(読書メーター

就労そして家事などでせいいっぱいの忙しい社会人にまずはお薦めしたい本だと思った。勉強(とおそらくバイト)に忙しい院生や学生や生徒さんでも良い。このくらいの分量が限界だと思うし、私のように「秋嶋亮『日本が世界地図から消える前に』からつくる補助教材の試み」を作る余裕など全く無いというかたでも、読むだけならできるというギリギリの分量と内容だと思う。「この本を読めるほど頭が良くない」というふうに自認しているかたなら、この書の代わりに出版社広報のかたのツイート(まりなちゃんまりなちゃん(@t2PrW6hArJWQR5S)さんの人気ツイート(新しい順))を読むのも手であるが、しかし前者は自分のツイッターアカウントを持っていないと充分には読めないことに注意である。いずれにせよ、忙しいかたがたが、新聞やテレビを視聴する時間を削って、その分の時間でこちらの書を読む、となった時に有用な書籍である。新聞やテレビはそれへの批評が職業であるようなかたがただけが見聞すれば、さしあたり充分だ。

と同時に、この書や秋嶋や白馬社が弾圧されていない(と假定したならばそうな)のは、今(2024年2月)のうちだけだろうことにも注意したい。現在秋嶋の著作やその広報活動が取り締まられていないのは、この書を読むと「れいわ新選組・共産党・社民党に良い印象をもたなくなる」と見込まれているからだ、と私は確信している。なので、日本政府が自民党の改憲草案を国民投票によって「正式の憲法」として決定した暁には、もはや用済みとして、まっさきに弾圧されかねない。この辺りは、獣医学・ウイルス学等の専門家である宮沢孝幸氏がテレビ出演して研究成果を公表したとき、あたかもその内容がタブーだったかのような恰好となり、それが原因で宮沢氏は研究所を潰され京大からも追放されることになったような恰好なのと、似たような状況になるだろう。実際には宮沢氏がそのような研究成果をあげることも、テレビ出演することも、それを口実に研究所を潰すことも、「謎の権力者」には事前の想定だったとしか見えない。宮沢氏ははめられたのだ。

この『消える前に』では、「謎の権力者」という言い方はいっさいしていない。大きく分けると、「謎の権力者」の正体は、或る場合には宗教団体であり、別の場合には外資である。それにプラスしてアメリカを中心とする軍産複合体も挙げられるだろう。また今後は国際的な保健機関もプラスされることになろう。だいたいこの四つが「首魁」であり、政治・経済・報道・医療などの日本での動きというものはそれらに操られていることになる。それらの諸力によって事態を曖昧にしたり不可視にしたりして、少しずつ着実に日本国が住むのが苦痛な国になっていく、というその現在や近未来が伝わってくる。

この『消える前に』が秋嶋によって書かれているのとほぼ同じ時期に、インターネットの検索エンジンのGoogleがおかしくなり始めた。検索結果が露骨に「官公庁」「公式団体」「巨大報道機関」かさもなくば「疑わしい内容のもの」に大きく偏ってきた。特に一部の語句に関しては前者のみが表示されるようになってきた。そして秋嶋がこの本を書き終わる頃には、他の検索エンジンも同様の方向におかしくなり始めていた。なので、秋嶋が「検索エンジンを調べればすぐにわかるに決まっている」と見なしている事柄は、もう検索エンジンで調査することが絶望的に困難になってきている。そのようなインターネット事情は『消える前に』にはまだ反映されていないことになる。

この『消える前に』の今一つのセールスポイントは、薬害と原発事故の両方を各一章を割いて取り上げていることだ。つまりこうだ。SNSを少しばかりやってみるとすぐにわかることだが、「薬害について問題を訴求する人は原発の問題をまったく顧みない」「原発や核兵器について問題を訴求する人は薬害の問題をまったく顧みない」という状況が成立している。そしてどちらの側の人であっても、そのことを「改憲阻止」につなげていくように主張する人はさらに少数である。決していないわけではないが少ない。「薬害について問題を訴求する人は原発の問題をまったく顧みない」という場合は、ワクチン接種が国際健康機関などによって準強制化されうるので、改憲によって緊急事態要項が導入されると完全強制になってしまうことを訴える。他方、「原発や核兵器について問題を訴求する人は薬害の問題をまったく顧みない」という場合は、日本の軍国化が九条2項の改変ややはり緊急事態要項の導入によって容易になってしまう事態を訴える。いずれにせよ、緊急事態要項の導入には危機感を感じるわけなので、そこで両者は共闘できそうにも思うが、SNSで見る限りそうなっていない。…とそういうときに、秋嶋の『消える前に』はその両者を等分に扱い、どちらも重大問題として訴えているわけだ。言論の布置からいって、そのような態度こそが今求められているし、そういう論客が他にも現れてきて良いはずだが、他にはあまり見当たらない。SNS上の一部の数名のおそらく民間人に限られるだろう。

それにしても、驚くべきは秋嶋の情報収集能力の高さだ。この著作に事実として書かれているものをネットで検索しても多くの場合私は期待通りの検索結果にはならなかった。「こういう法案が国会で決定した」という事項ならまだ調べることは可能かもしれないが、それ以外の実に多くの事実命題が私には「どうやって調べたのか」が全くわからないものなのだ。たいがいの人はごく平均的な報道機関の報道を忙しいなかを合間を縫って知る地点にとどまっているだろう。それに対して、秋嶋は報道機関が何を報道し何を報道していないかも把握しているし、国会で何の法案が通過し何の議題が扱われなかったかも把握しているし、他にもとうてい報道されないような事実をたくさん入手していて、その多くが私からすると「どうやって調べたのだろう」という内容なのだ。なので、多くの人がこの『消える前に』を読んでも「本当かよ?」と思うだろうと思う。理由は、依拠している事実命題が多くの人の接するメディア環境の中にまったく無いものだからだ。そういうわけで、『消える前に』は平均的なマスメディアでは報道されない重要な事実を学ぶ本にもなっている。それを疑うことは無論可能だが、調べても結局わからないことも多い。本当にどうやって調べたのだろう。

この書は内容が「賞味期限切れ」になってしまうより先に、出版停止になってしまいそうな書である。読むなら2024年のなるべく早い時期に、ということになる。購入はどうやっても良いが急いだほうが良い。ちなみに公立図書館に置いてあるかと思って調べたら、散発的になら置いている図書館もちゃんと在った。すべて貸出中であった。