コメント:松岡正剛『17歳のための世界と日本の見方―セイゴオ先生の人間文化講義』

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松岡正剛『17歳のための世界と日本の見方―セイゴオ先生の人間文化講義』(春秋社)

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  • 前近代頃までの人間文化の解説講義を書籍にしたものである。大学生が何も知らないことに驚いた著者が、初歩から解説するというスタンスでおこなった講義である。これを読めば「何に入門すればよいか、わかる」、「入門書に入門するための入門書」といったタイプの書だと言える。ただし、取り上げられている固有名は初歩的なものであっても内容は必ずしもありきたりのものではないし、初歩的とも限らない。
  • たとえば「キリスト教を作ったのはイエス=キリストである」と信じている人や、「古代ギリシアの哲学はヨーロッパの歴史のなかで連綿と継承されてきた」と信じている人などは、この書籍の対象読者だと思う。この書籍のなかではそのようには書かれていないからだ。
  • 高校生・大学生の教科学習の補助教材としても使うことができるし、大人の学び直しにも使える書籍だろう。書いてある内容はそれなりに充分興味深いと言えると思うが、今すぐ役に立つということはあまり無さそうだ。基本的には、今後より広く深くなにかの文化事象を学ぶ予定の人が、初歩に読むのに良い本という位置づけになると思う。ただし、扱われている内容がどれも均等に詳しいわけではなく、扱いに軽重や偏りはある。その点を考えても、位置づけは補助教材といったものになろう。予備校講師が書いた「実況中継」シリーズの大学版だと言えば本書の性質がわかりやすくなるかもしれない。
  • 「西洋」と「東洋」とを或る程度均等に鳥瞰しつつ、話題を選び、それらの共通点や相違点を多少描くようにもしている。ただ、この点に重点が在るというほどではないようだ。ともあれ、この本で学べば「あの本のどこあたりに書いてあったっけ?」というふうにして、他の書籍や講義で学んだときに思い出すことができるようになる。そうすれば文化事象のなかでの位置づけが或る程度わかるようになる。