コメント:稲継裕昭 監修『キャリア教育に役立つ!官公庁の仕事』(あかね書房)

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稲継裕昭 監修『キャリア教育に役立つ!官公庁の仕事』(あかね書房)

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  • 多くの人は読めばわかると思うが、「都合の悪いこと」は書いていないというタイプの本である。だが、「〇〇ということになっている」という記述には重要なものが多く、それでいて体系的に学ぶ機会がたぶん全く無い。たとえば「〇〇省は××をやることになっている」という、そういう次元の学びだ。この本が最善だったり唯一だったりするかどうかはわからないが、この書くらいのことを知っていないと、いろいろと困ることになる。なお、この書を読むと「検察庁」が法務省に所属することや、しかし、法務省の外局ではないこと、そして省庁の全体図にも検察庁が描かれていないことがわかり、いろいろと想像したくなる。だが、そんな想像をしない読者であっても有益で、行政について初歩的なことを知るときの前提となっている知識が多く書かれている。
  • 官公庁の業務は、昔から行なっているものも在れば、比較的最近になって手掛けるようになったものも在り、そのため、「〇〇省は××」というふうに整然とわかりやすく計画的に分割されているわけではない。「なぜこんなふうに分かれているのだろう」という疑念はどうしてももたざるをえない。この書は比較的上手に対処したほうだと思う。「総務省」以外は省の典型や中心となるイメージを打ち出して、「なぜこんな分かれ方」という疑念をあまり起こさせないように工夫している。また、省の紹介と、省の外局の紹介とのあいだに、内閣府や、内閣から独立した機関などの紹介を挟み込み、また内閣府の外局を他省の外局より先に紹介することで、「なぜこの庁はこの省なのか」という疑念をあまり惹き起こさないようにもなっている(例「なぜ消防庁が総務省なのか」とか「なぜ金融庁が財務省ではないのか」)。
  • 一覧図には「行政執行法人」というものが、どの組織ともつながらない孤島のように在ることだけが示され、その例として「国立印刷局」というどの省にも属さない組織などが在ると記載されていた。だが、今ウィキペディアで調べたら国立印刷局は財務省の所管なのだそうだ。このあたり状況がちょっとわからない。あと外務省の所管としてJICA(国際協力機構)というものが在ることが本書では軽く紹介されていたが、これは「独立行政法人」という扱いなのだそうだ。先に出てきたカテゴリーである「行政執行法人」というのは、ウィキペディアによると「独立行政法人」の一種であるらしい。どうも、「なんとか法人」というのが官公庁の業務の紹介にも登場してきて、それぞれのあいだの関係というのはなかなか錯綜しているようだ。先にも述べた検察庁にもなればなおさらだ。
  • 業務内容に関してもその分割がやや錯綜しており、組織のカテゴリーもやや錯綜しているような在り方が、この書では隠すことなく或る程度読み取ることが可能なように書かれていた。とは言え、多くの読者は「そもそも官公庁が何をしているのか」という基本的なところが知りたいわけだし、私もそこは勉強にもなった。また、そのくらいを押さえておかないと、「行政学の初心者向けの入門書」すらも読めないくらいのようだ。その点で、唯一ではないだろうが有益な書であると思う。